オフィスのデスクの上にティッシュボックスがある。とある業者さんがリマインダー・ツールとしてくれたものだ。そこには、
「未来を予測する最良の方法は未来を創ることだ! By ピーター・ドラッガー」
と書いてある。
未来は成り行きでどうなるかを予測するものではなく、自らが行動することで創るものだ!と言っているのだろう。
別に言い方をすれば、ゴールは為された行動の結果としてたどり着くところではない。行きたいところをゴールと決めて、そこに着くために必要とされる行動を計画・実践する、というふうにも読める。
以前ある仕事での経験から、仕事やプロジェクトの計画を立てるときに「ゴール」から書く、という方法を学んだ。まず「ゴール」をイメージして、そこに着くための行程表がプロジェクト計画書に当たる。その際に、「ゴール」をどう設定するかでプロジェクトの趣は大きく変わってくる。
仕事の「ゴール」とは何だろう。
1、納品というゴール
エージェンシーとしてはプランを提案・実践して目論んだ成果を上げることが求められている。その中で物理的なもの(印刷物や構造物や書類、WEBページなど)を間違いなく制作して納めることが一つのゴールだ。
2、報告書というゴール
企業と企業の取引だとそれで終わりとはならないことが多い。発注した担当者がクライアント内部で上長なり組織に対して成果報告を行い、評価を得ることが納品の先のフェイズとしてある。
ここで求められるのは、わかりやすい報告書だ。企業がプロジェクトにどのような報告を望んでいるかを理解・想定し、それに合わせたプロジェクトを組成する。敢えて極端に言えば、報告書を書くためにプロジェクトを運営する、業務を進めるということなんだ。
プロジェクト報告書には以下の内容を記述する。プロジェクト・ゴール、目的として設定したKPI、KPI到達のための戦略としての取り組みと具体的な手法(戦術的施策内容)、さらに実際に施策を展開しての結果(FACT & FINDINGS)をまとめ、最終的にはEXECTIVE SUMMARYとして取りまとめる。
その際のフレームワークの1つが“GOST”だ。
たとえば、ドリンクXXXのプロモーションにおけるGOSTの策定例は次のようになる。
GOAL:
今後3年間を要して20代の若者にとって新発売される飲料XXXを飲むことが一つのスタイルであるブランドとしてポジショニングする
OBJECTIVE:
・ローンチング・プロモーションでは、ターゲットにおける認知率60%(一般認知率40%)の獲得
・ブランドイメージとして、「新しさ」「カッコよさ」「健康によい」「若い人に人気がある」において、それぞれXX%の支持率を獲得
・キャンペーン期間中にターゲットの飲用経験40%を獲得
STRATEGY:
広告展開/ネット展開/GMS,CVS店頭展開/サンプリング実施/マストバイキャンペーン実施
TACTICS:
広告: TVCM XXXXGRP相当/ラジオCM ・・・・/ネット: バナー展開 XXXX INP・・・・
報告書をゴールとするとKPIの測定・検証が必要になる。ここで施策の善し悪しを含めて企画が評価される。逆にKPIが取得できない施策は企画から外すことになる。KPIとの関係や施策実施によるKPIへの影響が説明できなければそこに投下するプロモーション投資のROIが評価できないからだ。さらにここを突き詰めていくと、個々のクリエイティブもKPIとの関係が説明できないといけない。単に「かっこいい」「目立つ」だけではNGで、「このクリエイティブだと注目率を15%向上させることができるので認知者の母数をXXX人多くすることができる、、、」のような説明が必要となる。
このように報告書を仕事のゴールとするとすべての施策について、ゴールに向かって合目的的にベクトルを合わせることができる。そうすることでオプションがある場合の選択も合理的に行え、検証して求めるだけの成果が見られない時のボトルネックも発見しやすくなるメリットは大きい。
3、リピートというゴール
きちんと納品をした。企業内部における報告でも評価を得られた。その次のレベルのゴール、3つ目のゴールはリピートオーダーが獲得できるか、となる。
プロジェクトはどんなに綿密に実施しても予算的な制限や当初の仮説と異なる前提条件の出現などで100%の成果が出ているとは限らない。だから、次のプロジェクトでより良い形に修正したい。今のプロジェクトで得た知見をベースとしたPDCAを回すことでさらに良い成果を求めるプロジェクトを組成することができる。
そのようなプロジェクトの継続オファーや同一企業内での別案件の獲得がエージェンシーにとってはゴールとなる。これは同じドラッカーの顧客の創造に通じる部分でもある。
「未来を予測するのではなく、未来を生み出すようにプロジェクトは運営されることが望ましい。」
しかし、現実はなかなかそうならないのも事実である。