月別アーカイブ: 2013年6月

ティッシュの上のドラッカーが教えてくれたこと

オフィスのデスクの上にティッシュボックスがある。とある業者さんがリマインダー・ツールとしてくれたものだ。そこには、

「未来を予測する最良の方法は未来を創ることだ! By ピーター・ドラッガー」

と書いてある。

2013-07-01 08.17.54

未来は成り行きでどうなるかを予測するものではなく、自らが行動することで創るものだ!と言っているのだろう。

別に言い方をすれば、ゴールは為された行動の結果としてたどり着くところではない。行きたいところをゴールと決めて、そこに着くために必要とされる行動を計画・実践する、というふうにも読める。

以前ある仕事での経験から、仕事やプロジェクトの計画を立てるときに「ゴール」から書く、という方法を学んだ。まず「ゴール」をイメージして、そこに着くための行程表がプロジェクト計画書に当たる。その際に、「ゴール」をどう設定するかでプロジェクトの趣は大きく変わってくる。

 仕事の「ゴール」とは何だろう。

1、納品というゴール

エージェンシーとしてはプランを提案・実践して目論んだ成果を上げることが求められている。その中で物理的なもの(印刷物や構造物や書類、WEBページなど)を間違いなく制作して納めることが一つのゴールだ。

2、報告書というゴール

企業と企業の取引だとそれで終わりとはならないことが多い。発注した担当者がクライアント内部で上長なり組織に対して成果報告を行い、評価を得ることが納品の先のフェイズとしてある。

ここで求められるのは、わかりやすい報告書だ。企業がプロジェクトにどのような報告を望んでいるかを理解・想定し、それに合わせたプロジェクトを組成する。敢えて極端に言えば、報告書を書くためにプロジェクトを運営する、業務を進めるということなんだ。

プロジェクト報告書には以下の内容を記述する。プロジェクト・ゴール、目的として設定したKPI、KPI到達のための戦略としての取り組みと具体的な手法(戦術的施策内容)、さらに実際に施策を展開しての結果(FACT & FINDINGS)をまとめ、最終的にはEXECTIVE SUMMARYとして取りまとめる。

その際のフレームワークの1つが“GOST”だ。

たとえば、ドリンクXXXのプロモーションにおけるGOSTの策定例は次のようになる。

GOAL:

今後3年間を要して20代の若者にとって新発売される飲料XXXを飲むことが一つのスタイルであるブランドとしてポジショニングする

 OBJECTIVE:

・ローンチング・プロモーションでは、ターゲットにおける認知率60%(一般認知率40%)の獲得

・ブランドイメージとして、「新しさ」「カッコよさ」「健康によい」「若い人に人気がある」において、それぞれXX%の支持率を獲得

・キャンペーン期間中にターゲットの飲用経験40%を獲得

STRATEGY:

広告展開/ネット展開/GMS,CVS店頭展開/サンプリング実施/マストバイキャンペーン実施

TACTICS:

広告:    TVCM XXXXGRP相当/ラジオCM ・・・・/ネット: バナー展開 XXXX INP・・・・

 

報告書をゴールとするとKPIの測定・検証が必要になる。ここで施策の善し悪しを含めて企画が評価される。逆にKPIが取得できない施策は企画から外すことになる。KPIとの関係や施策実施によるKPIへの影響が説明できなければそこに投下するプロモーション投資のROIが評価できないからだ。さらにここを突き詰めていくと、個々のクリエイティブもKPIとの関係が説明できないといけない。単に「かっこいい」「目立つ」だけではNGで、「このクリエイティブだと注目率を15%向上させることができるので認知者の母数をXXX人多くすることができる、、、」のような説明が必要となる。

このように報告書を仕事のゴールとするとすべての施策について、ゴールに向かって合目的的にベクトルを合わせることができる。そうすることでオプションがある場合の選択も合理的に行え、検証して求めるだけの成果が見られない時のボトルネックも発見しやすくなるメリットは大きい。

 

3、リピートというゴール

きちんと納品をした。企業内部における報告でも評価を得られた。その次のレベルのゴール、3つ目のゴールはリピートオーダーが獲得できるか、となる。

プロジェクトはどんなに綿密に実施しても予算的な制限や当初の仮説と異なる前提条件の出現などで100%の成果が出ているとは限らない。だから、次のプロジェクトでより良い形に修正したい。今のプロジェクトで得た知見をベースとしたPDCAを回すことでさらに良い成果を求めるプロジェクトを組成することができる。

そのようなプロジェクトの継続オファーや同一企業内での別案件の獲得がエージェンシーにとってはゴールとなる。これは同じドラッカーの顧客の創造に通じる部分でもある。

 

「未来を予測するのではなく、未来を生み出すようにプロジェクトは運営されることが望ましい。」

 

しかし、現実はなかなかそうならないのも事実である。

 

 

フラッシュモブ ( Flash Mob )は選挙を救えるか?

「日本維新の会」橋本共同代表の従軍慰安婦発言に端を発した維新党内の痴話げんかの陰に隠れて本質的な政策論議や、今回の都議会選挙は自民党の圧勝!民主党の惨敗で終わった。(改選前後の議席数変化は、自民党 38→59議席、民主党 54→15席)

アベノミクスの共同幻想効果が覚める前に、安倍さんは6年前の溜飲が一先ず下がり、続く参院選で高らかに復活宣言をしたいはずだ。

しかしその前に注目したいのが都議選の投票率の低さだ。今回は43.5%と前回(2009年)の54.49%を大きく下回り、過去最低の40.80%(1997年)に次いで悪い。

選挙のタイミングとしては橋本さんの問題は別として、参院選の前哨戦でもあり、アベノミクスによる短期的成果の検証やオリンピック招致活動もあって、注目度の高い選挙かと思われていたが、有権者の反応は鈍かったようだ。

togisenntouhyouritu

(グラフは時事ドットコムより引用)

このままでは次の参院選も低投票率で終わる可能性を大きくしている。一般に投票率の低い要因として若者の政治無関心・選挙離れがあげられて久しい。

参院選における年代別投票率をみると

最も高いのは60代の75%前後、

最も低いのは20代の35%前後

となってその格差は大きい。また、30代も次いで低く48%前後となっている。わずか10年前の平成15年の参院選では30代の投票率はほかに比べても見劣りしないほど高かったのに、10年間で急降下している。

saninsennendaibetsu

出典:財団法人明るい選挙推進協会(http://www.akaruisenkyo.or.jp/070various/072sangi/679/

若者はなぜ投票しないのか?

財団法人明るい選挙推進協会の調査によると選挙に行かない大きな理由は、「政治への無関心」と「政治に対する無力感」とされている。

若者に限って言えば、「選挙がいつかも知らない」「投票所がどこかも知らない」というレベルの無関心が実態としては多いと思う。「なんか選挙カーがうるさいな」「道路にポスターが貼ってあるな」くらいの認識しかないのではないか。つまり、自分の生活のシーンに選挙という風景が全くないし、無意識のうちに選挙に関する映像や音声に対して受信装置を閉ざしている訳だ。

 20代、30代で普段投票しない人の80%近くが「ネットなら投票する」と答えている。

net

出典:株式会社パイプドビッツ 20代、30代を対象とした調査 500サンプル 2011年実施(東北を除く全国)

そんな中で、インターネット選挙が解禁になった。

とはいっても、ネットで投票ができるわけではないが、若者に対してネットという「入口」を開いたには違いない。

このネットという「入口」を使って新たな試みが行われている。政治に無関心というレベルの人に対して、政治の話をしても聞く耳は持たないだろうが、ネット民に親和性の高いコンテンツに加工することで政治や選挙への関心度を高めるものを「広島県」が始めた。

広島県はフラッシュモブで選挙啓発!PR動画をネット配信

Flash MobでGO! 投票!

広島市内のある広場で、買い物客や通行人の若者達が、突然、オリジナルソング「EVERYBODY,GO!投票!」に合わせてヒップホップダンスを踊りだす。ります。踊り終え、ポーズを決めた後で若者達が皆で投票会場へ向かうもの。撮影には、“カープ芸人”の「ザ・ギース」尾関高文(おぜきたかふみ)氏も参加。

Youtubeの他、県のサイトでも見れる。
http://www.pref.hiroshima.lg.jp/kouhou/nettv/4ch.php

個人的にはフラッシュモブを目の当たりにしたことはないがないが、非常に拡散性の高いコンテンツだ。うまくはまれば、若い世代に「ネット」を通じて「選挙」をPUSHできる。

ちなみに歴代のFlash Mob 再生回数ベスト3をみると、何れもyoutubeで10,000,000回をはるかに超える再生回数となっている。

Christmas Food Court Flash Mob, Hallelujah Chorus – Must See!

2年前 41,880,356回再生

Frozen Grand Central

5 年前 33,165,254 回再生

Sound of Music | Central Station Antwerp (Belgium)

4 年前 27,447,926 回再生

 

この広島県の試みにより、若い人の投票率が上がるのかどうか、その検証を含めて広島県には頑張ってもらいたい。

魔の時間帯

コンフェデレーションズカップ2013ブラジル大会において、日本は初戦ブラジルに0-3、2戦目イタリアに3-4と連続で敗れ、次のステージには進めなかった。残念だが、結果は結果として受け止めるしかない。この結果をもたらした原因はなんだろうか。

多くの解説者の方が失点の時間帯について触れている。前後半の開始5分と終了前5分間、いわゆる「魔の時間帯」である。2戦を通じて7失点中魔の時間帯の失点が6点。この時間帯の失点がなければブラジル戦は0-1、イタリア戦は3-1ということになる。であればグループ・リーグ突破の可能性は残していた。

manojikan

 

では、そのためにやるべきことは何だったのか。

「注意力が足りなかった」「集中力を欠いた」「ちょっとした気の緩み」というコメントがみられたが、「魔の時間帯」といわれるくらいに一般論としても失点の多い時間帯なのだから、注意力・集中力を保つ必要があるのはわかっていたことだ。もう一歩踏み込んで言えば、「注意力を高めよう」「集中力を高めよう」という抽象的な指示やメンタルを変えようとしても、修正ができないこともわかっていたことだった。

コンフェデ杯イタリア戦のハーフタイムにザックは「後半立ち上がり10分で勝負は決まる」と話したらしい。その言葉に続いてどんな指示が出されたのかはわからない。「10分で勝負は決まるからともかく攻めよう。」「10分で勝負は決まるから失点に気をつけよう。」なのか?

しかし、これでは監督としての指示にはなっていない。Next Actionとして、個々の選手は何をすればよいかが不明確だ。

つまり、「魔の時間帯」対策はこれまで個人任せではできなかったわけで、次のステップとしては組織として対応可能になるかである。

 

 

組織での対応となるとそこに戦略的な思考が入ってくる。つまり、「魔の時間帯」対策として「何を捨てるか」だ。何かを捨てて、失点防止対策の精度をより高く持っていく考え方だ。

 

戦略と戦術の定義はいろいろあるようだが、私の立場は「戦略とはやならないことを決めること。戦術とはやるべきことをどのように実施するのか」である。これが一番簡単でわかりやすい。サッカーという競技の特性上、ピッチの上での動き、行動は組織よりも個人に依存する部分が多いため、組織としての対応は限定的となることは仕方ない。だからこそ、単純でかつ大胆な戦略思考が必要ではないだろうか。

 

コンフェデ杯に戻ると、短期的にここでグループ・リーグを突破して行くための1つの方向性として考えられるのが以下である。

 

戦略としては「魔の時間帯の失点を防ぐために、その時間帯に限って攻撃的なサッカーをしない。」であり、その戦術は「相手陣内に選手をおかず自陣内に配置し、守備において数的有利な状況を作り出す。」である。4-2-3-1のフォーメーションを一時的に5-5-0にする。

極端かもしれないが、これがザックジャパンの「悪魔祓いシフト」である。

 

これって、当たり前ですかね? でも、これをやったチームって見たことないのですが。

野球で言えば、往年の「王シフト」ですね。

 

(もちろん、これでは部分最適を目指しているだけで全体最適である「試合に勝つ」を実現するには至っていない。試合に勝つためには魔の時間帯以外に勝つための戦略を持ち、戦術を実行する必要がある。また、サッカーについては単なる1ファンに過ぎないので、専門的に問題はあるかもしれませんがその点はご容赦を)

 

このところザックジャパンも敗戦が多くなって勝率は歴代監督に近くなってきたとは言え、Wカップに向けてぜひより戦略的に頑張って欲しいところである。

 

ザックジャパンの戦績

代表監督

戦   績

勝率

ザック

40試合27勝6分け7敗(PK戦は引き分け扱い)

67.5%

岡田

50試合26勝13分け11敗(PK戦は引き分け扱い)

52.0%

オシム

19試合12勝4分け3敗(PK戦は引き分け扱い)

63.0%

ジーコ

72試合37勝16分け19敗(PK戦は引き分け扱い)

51.4%

 

データは下記サイトより抽出し作成

http://www.nikkansports.com/soccer/japan/data/zack_japan.html

 

「ニューコーク (New Coke) 」を知っていますか?

「ニューコーク」を知っていますか?

マーケティングに関する大きな逸話の一つに「ニューコーク」の話がある。1985年にアメリカでコカコーラの味を変えて「ニューコーク」として売り始めたら、消費者(自らのブランドの支持者たち)から総スカンを食らった件の話だ。その伏線となったのがペプシコーラの「チャレンジ・ペプシ・キャンペーン」(ブラインドテストによる味覚評価)で、ペプシ社が行ったたくさんの味覚調査で尽くコカコーラはペプシコーラの後塵を拝し、キャンペーン期間中にどんどんシェアを落としていった。

coke

コカコーラ社は自らの調査でも同様の結果を得、コカコーラはシェアを回復するために「コカコーラ」の味を変えて「ニューコーク」として販売した。

この時ペプシ社側は、コカコーラがその「ブランド」が支持されて買われていることを理解していたという。「ブランド」ではコカコーラに勝てないと判断したペプシ社は、「味覚」という要素のみで比較するステージを作り、コカコーラ挑んでいった。これに対して、コカコーラ社はコカコーラが「ブランド」全体で支持されていたのに「味覚」で負けたことを気にしたあまり、相手の土俵に乗って「味」を変えるという愚行に出てしまった。(結果としては、3ヶ月後に旧来の味のコーラを「コカコーラ・クラッシック」として発売することになった。)

実はこの時の調査はテイスティング・テストとして、ごく少量の飲料を飲み比べる形で行われた。両者の味の特徴として、ペプシコーラはやや甘く、コカコーラは柑橘系フレーバーがするという特徴があった。少量を飲んだ場合は甘いペプシコーラの方が美味しく感じるが、実際に1本を飲む時はペプシコーラは甘すぎて好まれない傾向があったらしい。

消費者を、自らのユーザをよく理解し、信じていたのはコカコーラではなくペプシ社だった。

マーケターの役割はブランドとユーザの間に信頼関係を築き、それを強く長くつなぐことだ。その前提となるのがお互いを理解することである。
この逸話は、ビジネスにおいて、マーケティングにおいて最も重要なことはターゲットを理解することだということを示唆している。
マーケティングの第一歩は4Pではない。「ターゲットをわかろう」「ターゲットを描こう」ということだ。ターゲットのニーズ、ターゲットの本質を理解し、そのターゲットを自分の家族のようにわかってこそ、彼らに何をすればよいのかがわかるはずだ。

その後のコカコーラはターゲットをよく理解しているようだ。

コカコーラ社が2013年3月にインドとパキスタンで行ったキャンペーン。対立関係に有る両国に「Small World Machine」と呼ばれる自動販売機を設置し、それぞれのマシンの前に立つと相手国の様子が映る仕掛けになっている。その時に「Small World Machine」は両国の人に同じ動作をするように指示を出し、それが遂行されるとコカコーラが出てくるようになっている。(詳細は動画参照のこと)

この風景はコカコーラである必然は全くない。しかし、コカコーラ以外では為しえない風景だ。

Coca-Cola Small World Machines – Bringing India & Pakistan Together