月別アーカイブ: 2013年12月

“つけ耳”はファッションになるのか?

「つけ耳」はファッションとして今後成立するのかと、唐突に言われてもですよね。

実は今朝のネットで下の記事を読んだのです。
エルフ耳youtube
記事の内容はカナダの若い女性が耳を整形して、映画「ロード・オブ・ザ・リング」のエルフのような形状にしたというもの。個人的には妖精的でちょっとおしゃれに見える。
また、記事の中には次のようなくだりがある。

街を歩けば、耳にかぶせるラテックス製の“ロード・オブ・ザ・リング=エルフ耳”なるコスプレグッズが売られているが、それでは満足できず彼女はついに美容整形外科医のもとを訪ねた。手術にかかる時間は2時間、費用は日本円にして約4万2000円だそうだ。

また、その記事の中にあるYoutubeの映像を見たのだが、その関連映像にも気を惹かれた。そこには、整形まではしていないが、特殊メイク的に一般の人達が耳を長く変形させている投稿映像がたくさん載っていた。

更に「エルフ耳」で検索すると
なる情報があり、すでに何人かの整形ビフォー・アフターの画像が掲載されていた。
日付を見ると2007年の情報なのですでに5年以上前。
これらを見て思ったのは、いよいよ「つけ耳」がINになるのかなということだ。

実は、私の中では次の「ツケモノ」ファッションアイテムは「つけ耳かな?」となんとなく思っていた。

女性の「ツケモノ」の流れを勝手に紐解いてみると、

女性のファションアイテムとして、かつら(ウィッグ)、付け髪(エクステンション)、付け睫毛やマツエク(まつ毛エクステンション)、ネイルアートや付け爪、インプラントによる歯の矯正、等がある。
これらを(元の部位)….(化粧的なもの)…..(付けるもの)のようにまとめてみると
ツケモノ一覧
となる。
共通点として付けるものがファッションアイテムとして普及する前段として、ネガティブ・ケア(欠点補正)としての役割を担っていた。かつらは薄毛の人、付け睫毛はまつ毛の短い人、付け爪はつめの短い人、歯は虫歯などでの歯を欠損した人だ。

つまり、お悩み解決型商品として活用技術・素材などが研究された後にファッションとして普及していた。

では、「耳」に関するお悩みはなんだろう。
  • 耳が大きい
  • 耳が立っている
  • 耳の形が悪い
  • 左右不揃い
    などがあるが、大きな悩みではないような気もする。

とすると、「つけ耳」の可能性もなくなってしまうので、もう少し考えてみよう。

耳の悩みがほとんど見られないのは、現在「美しい耳」という概念が不明確なためだ。

つまり、耳は人によって耳たぶの大きさが違ったり、凸凹の形状が違ったり、大きさが違ったりしているが、「美しい耳」だという理想形や「なりたい耳の形」がはっきりしない。(耳たぶは大きいほうがいいのか、彫りは深いほうがいいのかなど、あまり気にされていないでしょ。)

そこで、「理想の耳はこの形!」や「今年の流行の耳型はXXXX」のような情報発信をしていけば、自ずと自分の耳の形に対して関心を持ち始め、自分の耳の形が気になり始める。そうすると、しめたもので何らかの悩みも顕在化するはずだ。

この悩みを解決して先にファッションとしての「つけ耳」の需要が発生するだろう。

街中で「エルフ耳」だけでなく、「赤い耳」や「青い耳」、「うずまき耳」などのファッション耳が闊歩するようになるにはもう少し時間がかかるようだ。

クリスマスプレゼントは「通販」で買われるのか?

JADMA(公益社団法人日本通信販売協会)は「贈り物と通販に関する消費者実態調査2013」を発表した。その結果の中からいくつかをピックアップしてみる。なお調査概要は以下の通り。

≪調査概要≫

  • 調査方法:インターネット調査
  • サンプル数:1000サンプル有効回答
  • 対象者属性:全国の15~69歳の男女
  • 調査日:2013年11月

 

(1)通販での贈り物の経験率

通販による贈り物はすでに30代、40代、50代女性および40代男性では経験率60%を超えており、有力な贈り物購買チャネルの1つとして顕在化している。
しかし、それ以外の層(10代男女、20代男性、60代男性など)では30%台の経験率にとどまっていて高いとは言えない。

1贈り物経験率グラフ

 

 

 

 

 

 

 

(2)イベント別の通販での贈り物購入経験率

以下の棒グラフは「贈り物自体の購入経験率」(通販以外も含む)で「誕生日」が最も多く、「お中元」が最も少ない。折れ線グラフは「通販での贈り物購入経験率」で、30%を超えるものは「お歳暮」「お中元」「誕生日」「母の日」の4つである。

この2つのデータから、「お歳暮」「お中元」などの毎年継続する家庭の公式行事においての通販化はかなり浸透している。それに対して、「結婚祝い」「出産祝い」の都度ごとの家庭としての贈り物は通販化率が低い。また、「誕生日」などのパーソナル色の強いイベントは贈り物を贈る率は高いが、通販はまだ浸透していない。

2イベント別通販贈り物購入経験率グラフ

(3)通販で贈り物をすることの良い点

「時間を気にせず購入できる」が飛びぬけて高く、次いで「相手が喜びそうな諸品をじっくり検討できる」が続く。この2つをみると、「贈り物の際は買い回りとか、商品選定にかなり気を配っているがそのための時間や労力はできれば失くしたい」というような要望が浮かび上がってくる。

3通販で贈り物を買う理由グラフ

 

 

 

 

 

 

さて、以上3つの設問からわかるのは

通販は贈り物のネガティブな側面を補うために利用されている

ということだ。

お歳暮、お中元などは、毎年継続して、商品選択にも気を遣い、件数も多い。モチベーションも本来のところから離れて義務感が先に立つ。百貨店のお中元コーナーに行けば長蛇の列になっていることも多い。

つまり、お歳暮・お中元を買うことは、全く“楽しくない”訳だ。

ここにサービス業の本質がある。

「人が嫌がることを代わりにするのがサービス業であり、そこにあるニーズは大きい」

そうなると「誕生日」「母の日」「クリスマス」などのパーソナルな贈り物は動機が純粋で商品選定自体も楽しい範疇にあるので、なかなか通販には移行しないかもしれない。

というか、何か違う魅力を付加しないと通販化率は高まっていかないだろう。

例えば、「孫の誕生日のプレゼントを選ぶ老夫婦」に対して通販事業者は「商品選択の基準や手法」を提供すると通販化率は高まるはずだ。

そのアイデアはたくさんある。

 

 

 

9割の人が心配している「老後」にビジネスチャンスはあるのか?

「知るぽると」(金融広報中央委員会)が2013年11月7日に発表した「家計の金融行動に関する世論調査」の時系列分析をしてみる。対象は二人以上世帯で世帯主が60才未満の現役世代の家族となる。調査サンプルは各年8,000サンプルで、毎年4,000世帯前後が回答している。

老後の生活についての考え方グラフ

上のグラフはその中で「老後の生活についての考え方」について聴いたものだ。
バブルが崩壊した1992年以降のデータとなるが、「非常に」または「多少」心配と答えている人は60%強から90%前後へと増加している。特に「非常に心配」と答えた比率は20%以下から50%前後へと2倍以上に増えている。

9割の人が老後を心配、さらに半数の人が「非常に」心配しているという状況は普通ではない。『こんなに多くの人が不安に感じていることだ。』

では、その不安の中味は何だろうか。

本当に不安なのだろうか?たぶん、本人たちはそれがわからないから不安に感じてい老後が心配な理由・心配でない理由るのだろう。

上記グラフは「老後が心配な理由」と「老後が心配でない理由」をそれぞれ対応させた選択肢で回答してもらっている。

老後の生活が心配な理由グラフのコメント

5つの理由の中で「心配な理由」と「心配でない理由」の差が広がっているのは「年金・保険」と「老後に備えての準備(貯蓄)」の2点。つまり、多くの日本人は「金融資産」はほとんどなく、「貯蓄」「年金・保険」では足りず、このことが「老後が心配」とする大きな理由となっている。

つまり、「お金」が足りないから老後が心配と思っている。しかし、その不安は漠然としている。老後にいくら必要かについて具体的に把握している人は少ない。年金を含めて夫婦2人で1億円は必要だとか、引退する時点で3000万円の貯金は必要だ、などの一般論はよく聞くが、それが自分事化していない。他人事と一緒の一般論では、不安も他人事になっている。不安が他人事の間は誰も具体的な行動には出ない。ただ、何となく心配して不安になっているだけだ。

この不安に対して、ビジネスとして不安感をなくすためのサービスがいろいろある。そのための相談先として、銀行や信託銀行、会計士やフィナンシャルプランナー、生命保険会社、不動産コンサル、などが様々なメニューをもって待ち構えている。どのアプローチも、老後の生活を計画してあるレベルの生活と不慮の病気・事故に備えるためにいくら必要かを想定しておいて、その生活資金の需給バランスをとる資金計画を立案するというものだ。

このようなサービスは2つの理由でサービスの提供範囲が偏ってしまう。

1つ目は、ある程度の収入なり資産を持っている人たち向けのサービスが中心で、本来より不安度が高い層(低年収)に対するサービスはかなり少ない。つまり、今ある資産なり資金をうまく運用して楽しい老後生活を迎えようとするもので、そのベースになる資産、資金を持たない層には解決策を提示できない。

2つ目は、迫っている老後が不安な人ほどその老後の実態を明確にしたがらない。心理的に「怖いものには目を瞑る」行動に出る。老後の生活実態を想定して明らかにする層はそれに対して対処ができる裕福な層といえる。その意味でも低所得・小資産層はその対象から除外されいる。

既存の老後生活設計・支援サービスから除外されている人に対しては『お金を使ってお金を増やす」ソリューションではなく、何らかの形で積極的に生きていく動機づけが必要で、そこには未着手の新しいビジネスチャンスがあるはずだ。最低限の生活は年金などの社会的仕組みで支える必要があるが、「お金」に依存しない「生きがい」を求める生き方を支援するサービスが必要になってくるのではないか。

7億杯の「コンビニコーヒー」市場はどこから来たのか? 

日経トレンディが発表した「2013年ヒット商品ベスト30」でトップとなった「コンビニコーヒー」の勢いは止まらない。トップのセブンイレブンだけで年間4億5千杯、コンビニ全体で7億杯とも言われている巨大市場に今年一年で一気に成長した。

そこで、この巨大市場はどこから形成されたかを考えてみたい。今まで、外ではコーヒーを飲まなかった人たちが飲み始めたのか、スタバやドトールなどのカフェからの乗り換えなのか、はたまたコンビニで売っている缶コーヒーからの移行なのか?

まず、朝日大学マーケティング研究所が2013年8月に実施した調査によると

コンビニコーヒー利用者属性

コンビニコーヒーの利用者層はカフェチェーンやファストフードのコーヒー利用層で多くなっており、市場形成初期の時期にはこれらのコーヒーにこだわる人たちが利用している業態からの移行が進んだと考えられる。(出典:外出先で買うコーヒーに関するマーケティングデータ

代替コーヒー市場グラフ

一方で、コンビニコーヒーの利用経験者に聞いたコンビニコーヒーによって代替されたコーヒーをみると「自販機缶コーヒー」「コンビニ缶コーヒー」が多くそれぞれ34%、36%を示しており、「カフェチェーンコーヒー」「ファストフードコーヒー」は15%、10%に留まっている。
これは先のデータを併せて考えると、カフェ、FFコーヒー利用者も関心を持ってトライアルした人は多かったが、実際は多くの人たちは移行しなかった。逆に缶コーヒー飲用者にとってはコンビニコーヒーのインパクトは大きく、多くの人が移行したと理解できる。
また、減ったものは「特にない」という回答は、これまで外でのコーヒーを飲まなかった人もしくはコンビニコーヒー分消費量が増量した人と判断できる。これが外飲みコーヒー市場全体では純増分で38%と大きい比率を占めている。

コンビニコーヒーは缶コーヒーからの移行が最も多い。缶コーヒーは男性中心のドリンクで、女性が缶コーヒーを飲む姿はほとんど見たことがない。ところが缶コーヒー飲用者を男女比でみると男性:女性=72:28となるらしく、缶コーヒーの28%は女性が飲んでいたということに驚くのだが、この女性缶コーヒー飲用者のほとんどはコンビニコーヒーに移行したのではないかと思う。また、これまで外飲みコーヒーをしなかった女性もかなりコンビニコーヒーの出現により外でコーヒーを飲むようになったのではないか。

ちなみに、セブンカフェの利用者の男女比率は54:46と、ほぼ半数が女性である。

コンビニコーヒーの魅力をまとめてみると、以下のようになる。

  1. 基本100円と缶コーヒーより安い
  2. 店内がコーヒーの香りで満たされ、そそる
  3. イートインでの休憩にぴったり
  4. コンビニスィーツと一緒に食べられる
  5. 本格的で淹れ立てでおいしい

安くて、利便性も高く、味もよく、本格的なコンビニコーヒーといえそうだ。

朝日大学の調査結果以外にもいくつかの調査結果や記事を読むと、それぞれにデータは異なり、一貫性のある説明材料として扱いづらい部分もあるが、データだけでなく肌感覚的な情報も含めてコンビニコーヒーの市場構造を勝手に推測してみたのが下図だ。

外飲みコーヒー市場構造図

今後、事業者サイドや調査機関の情報で上の図を裏付けることができるデータが公表されたらぜひ検証してみたい。

当たってもはずれても、予測するのがマーケターの役割だ!