月別アーカイブ: 2014年2月

顧客の見える化

「顧客の見える化」とは

「顧客を見える化」しようと言われる。「見える化」とはわかりやすい言葉だが実は具体的ではない。「顧客の見える化」と言われて、「顧客のペルソナを作る」と思う人もいるし、「顧客のデモグラフィック特性をまとめる」と思う人もいるし、「顧客のサンプルを集めて、実際に会って話をする」ことを考える人もいる。いずれも、間違いではなく、その時その時の「見える化」すべきものが違うからだ。
とはいっても、いろいろなシーンで「顧客の見える化」が求められているということは「顧客」は見えづらい厄介なものであることは間違いない。

本当の顧客とは何か

企業にとって「顧客」とは収益源である。お金を費やしてくれる人や企業である。つまり、企業にとっての価値を生み出すものといえる。
よって、「顧客」を測るメジャーは本質的にはどれだけ価値を生んでくれるのかでとらえるべきである。これがまさに「顧客生涯価値(Lifetime Value)」である。

「顧客生涯価値(Lifetime Value=LTV)」が指し示すものは、現在見えている「顧客」だけではなく、その後企業との関係が続く間の「顧客」を含めての「本当の顧客」である。
そこには時間軸としての奥行きとそれに伴う関係の幅が生まれてくる。
最初は1つの商品を購入した顧客が、次第に繰り返しその商品を購入するようになり、さらにその商品以外の商品を購入するようになる。このような成長過程も含めて「顧客」をとらえる必要がある。

顧客の見える化

上の図にあるように「見えている顧客」と「真の顧客」は異なる。「真の顧客」をとらえる際にLTVを少し分解してみてみよう。上図でいう(真の顧客-A)は(初回客)、(真の顧客-B)は(リピート客)、(真の顧客-C)は(複数商品リピート客)となる。

(初回客)      LTV①=購入金額
(リピート客)    LTV②=購入単価×購入回数
(複数商品リピート客)LTV③=Σ(商品単価×商品数×購入回数)

 

「見えない顧客」とは

さて、上図には入っていない「見えない顧客」が実はいる。それは、次の2つだ。

「見込み客」…商品やサービスは知っているが、まだ購入者ではないが一般市場から顕在化した顧客ともいえる人たち

「離脱客」…一時期、購入者ではあったが何らかの理由で購入を中止した顧客(その後他ブランドの顧客になっているのか、そのカテゴリ自体の利用を中止しているのかはわからないが)

以上の5種類の顧客について「見える化」をすることが「顧客の見える化」となる。つまり、この5種類の顧客について「LTV」を算出することが「見える化」の基本となる。

第一に「顧客数」「商品単価」「購入回数」「購入頻度」を明らかにする。そして、延長上にある「顧客離脱可能性」を含めた「顧客生涯価値」の推定値を算出することが見える化の1つのゴールとなる。

最後のその顧客それぞれの「獲得経路」「獲得コスト」と対比することで「利益」としての顧客価値を算定することで Next Action に向けた有益な情報となる。

満足度調査から戦略を抽出する

今回紹介するCSポートフォリオ分析やBSA(ベネフィット・ストラクチャ・アナリシス)と呼ばれる分析手法は通常の顧客満足度調査を一歩進めつつ、満足の構造を明らかにして、次の一手を打つための示唆を得ることができる分析手法で、単純な構造のためわかりやすく有意義な結論を導けるアプローチである。

分析概要をみると、顧客は何を求めて商品を購入するのかを明らかにし、その要求の構造の中でそれぞれのブランドはどの程度の支持【満足度】を得ているかを明らかにする。
分析の対象とするデータはアンケートで取集し、 質問する項目は以下の通り。

  1. そのカテゴリの商品を選ぶときにそれぞれのどんな点を重視して選択しているのか
  2. 重要視するポイントでブランドP(自社)はどのように評価されているのか
  3. 同様に他社商品(ブランドB、C、、、、)はどのように評価されているのか

●基本的な分析項目は以下の通り。

  1. 消費者の商品選択時の項目別重視度
  2. 商品毎にそれを選択した消費者の項目別満足度
  3. 上記の合計である商品カテゴリごとの購入者の項目別満足度

例として「ボールペンを購入する場合」を考えてみよう。

●評価項目は以下の通り。

  1. 書き味
  2. インクの持ち
  3. ペン先の太さ・細さが選べること
  4. インクの色が鮮やかなこと
  5. インク色のバリエーション
  6. 軸に握りやすさ
  7. 価格

●質問内容

【重視度の質問】あなたはボールペンを購入するときに、それぞれの項目についてどの程度重視しますか。
【満足度の質問】では、あなたがお使いのブランドについて、それぞれの項目についてどの程度満足されていますか。

●重視度×満足度分析のマトリクス分析
BSA1

  • 重視度が高く、かつ満足度が高いのは●価格●インクの持続 >>>(A)
  • 重視度が高く、満足度が低いのは●書き味●インクの鮮やかさ >>>(B)
  • 重視度が低く、満足度も低いのが●軸の握りやすさ >>>(C)
  • 重視度は低いが、満足度が高いのが●インク色のバリエーション >>>(D)

つまり、ボールペン市場全体での購買意識をみると(B)ゾーンにある「書き味」「インクの鮮やかさ」に対する不満が高く、改善余地が見込まれる。
(A)ゾーンにある●価格●インクの持続は重視度は高いがある程度満足されているので現状を維持することで顧客満足を維持する。
(D)ゾーンにある●インク色バリエーションは重視度が低いが既に満足されており、現状維持を目指す。(C)ゾーンは重視度も低く満足度も低いので改善は求められるが(A)ほどには急がない。

これをブランド別(P,Q,R)に分析したものが次図。〈都合により3項目、3ブランドのみ記載)
BSA2

「書き味」の重視度×満足度をみると
ブランドPは重視度、満足度共に高く「書き味」がPの魅力ポイントとなっている。
ブランドRは重視度は高いが、満足度が低く、Rの購入者は「書き味」を求めてRを購入しているにもかかわらず「書き味」に満足していない。また、ブランドQは「書き味」に対しての重視度も低く、満足度も低いので、3つのブランドの中で「書き味」を求められていないブランドといえる。

「インクの鮮やかさ」についてみると、
3ブランドの購入者とも重視度は高くほゞ同レベルだが、満足度はいずれも低い。つまり、ユーザは色の鮮やかさ」を求めているが、どのブランドもそれに応えることができていない。それゆえに、いずれかのブランドが「鮮やかなインク」を開発すれば、高い評価と他ブランドからシェアを獲得することが可能なことが見て取れる。

最後に、「インク色のバリエーション」はブランドPだけが満足度が高く、ブランドQ,Rは中庸レベルの満足度にとどまっている。しかし、「インク色のバリエーション」はブランド選択時の重視ポイントとはなっていない。そのため、現状では満足度に差があってもそれはブランド選考にあまり影響しない。しかし、例えば、ブランドPが「インク色のバリエーション」をブランド選択要素として重要であるという「用途提案」「使用方法提案」ができれば、「インク色」の重視度は高まり、その中でブランドPは優位なブランド・ポジションを獲得し、シェアを上げることができる。

このようにブランドを「重視度×満足度」の空間にポジショニングさせることで次の一手を見出すヒントが得られる。

「データ分析の心得のひとつ」

データ分析の最初の一歩は、「何のために何を調べるのか」を考える。つまり、分析の目的と分析の方針を決めることから始まる。

「何のために何を調べるのか」をどう定義するかだ

これは、「次に何かをするために」なので、データ分析の後のアクションがわかればよい。「何を調べるのか」はまさに次のアクションで足りないものを揃えるという感覚だ。そこには「このデータ分析結果をもとにXXXXをする」という明確な意思が必要になる。

 例えば、「製品別の販売データと市場シェアデータを見ながら来期の商品政策(撤退商品)のピックアップを行う。」などが目的と方針になる。

このように目的と方針がはっきりとしている場合は問題ないが、「目的」が不明瞭な場合が結構多い。「このデータを分析したいが、どうかな?」「何のために?」「うーん、データがシステムから出てきたので取敢えず、、、」みたいなケースって、実は結構多いような気がする。

その時は「データ分析の目的は何か」、「わからないことは何か」がわかっていないことが多い。改めて「分析の目的と方針」を明確にするステップが必要になる。このような状況になった時には(顧客と打ち合わせることも重要だが、顧客と打ち合わせをしても埒が明かないことが多いので)、顧客の現状置かれている状況から有効な分析や過去の経験から類似ケースで必要とされた分析を提案することになる。

 「わからない」とは何か

少し概念的な話になってしまうが、実は「わからない」という状況は「大きすぎて掴みようがない『象』状態」「細分化されすぎて傾向が掴めない『蟻』状態」に分けられる。いわゆる「群盲象を評す」状態と「木を見て森を見ず」状態である。

 「わかる」とはどんなことか

『象』状態ならば、まず全体をいくつかに「分けてみる」。鼻、脚、耳、しっぽなど動作が異なるものに分けることでそれがどのような機能を持っているか知ることができる。

『蟻』状態ならば、個別の蟻を何らかの基準でいくつかのグループに分ける。(例えば、外観、活動量、活動時間帯、、、、)そしてそのグループ間の違いを比較することで、グループ毎の特徴を掴む。

「象」にも「蟻」にも共通するのは、どちらのアプローチも結果的にはグループを作ってそれを比較することになる。

「わかった」とは比較によって特徴を掴み、選択したグループに対して何らかのアクションを起こすことができる状態を「わかった」と言う。

データ分析は「わかった」状態がゴールなので、このゴールから分析プロジェクト(どんなデータを集めて、どんな分析をするのか)を決めることが最も重要な心得だ。

上記はこてこての仮説検証型のアプローチで、例えば事例としては以下のようなケースが考えられる。

(事例)
アウトドア用品のプロモーションを自動車の新規購入者に向けて展開することを検討している。具体的には車の購入者に対して車購入時に特別価格で購入できるアウトドア用品のカタログを提供するプロモーションだ。その対象として、市場の中でアウトドア派の車として認識されている車をA,B,Cの3つにまず絞り込んだ。
次に、各車種の直近の販売台数を四半期単位でとりまとめるとともに、各車の所有者のキャンプ用品の所有率を調査した。
その結果、車Aの所有者はB,Cに比べてキャンプ用品の所有率が高いことが確認でき、今後の四半期(キャンペーン期間)の見込み販売台数も3車種の中で最も多いのでAを対象にプロモーションを実施した。

ゴールであるアクションプログラムが決まっているので、仮説さえ間違えなければスムーズなプロセスで最低限のデータに基づいて意思決定を行なうことができる、ということだ。

アンケート調査のサンプル数はどうやって決めるのか?

マーケティング・リサーチと言っても幅広いが、その中でも実務の現場ではかなりの頻度で話題になるテーマを取り上げてみた。
アンケートの獲得サンプル数は実施コストに直接影響するので調査を企画する際に検討することになる。コストは低い方がよいが調査の結果の信頼性が損なわれては元も子もない。そこで、コストと信頼性の見合いをしながら調査サンプル数を決める。(一方で予算枠という制限もあるが)

アンケート調査は基本的に標本調査(サンプリング調査)だ。つまり、母集団の一部を抽出して調査をし、その結果から母集団の値を推計する。例えば、日本全体の20代女性の意見を調査するためにサンプリング調査をするケースでは、母集団は20代女性全体なので約635万人(H.26.1.1現在)。

その際に必要なサンプル数はいくつなのか?

以下の表は、母集団の人数別に上下3%の誤差範囲で調査をする時に必要なサンプル数を記したもの。母集団が1,000人以下の少ない場合を除くと母集団の人数に拘わらず1,000人前後の人数をとれば3%の精度が確保できることがわかる。つまり、母集団の人数は標本誤差にあまり影響しない。(マーケティング・リサーチで母集団が少ないケースは、ある特定のエリアに居住している人や特定の店を利用している人のような条件を絞り込んだ場合だ。)

母集団とサンプル数

 

次に2つめの表はサンプル数別の標本誤差を一覧にしたもの。ちなみに同じサンプル数なら推計するアンケート結果の比率(回答比率)が50%に近いものほど標本誤差は大きくなる。(例えば、ある意見に対して調査結果の賛成:反対の比率が1:9なら母集団の比率も反対が多いと小さい誤差で言うことができる。しかし、調査結果の賛成:反対の比率が4:6なら反対が多いといっても誤差は大きく母集団でも反対が多いとは言えないこともある)

標本誤差一覧表

例として400人のアンケートを実施して賛成が32%、反対が40%だった場合をあげてみよう。

実際の調査結果としてはその計測値に対して誤差を範囲で見込むので賛成は32%±4.6%=(27.4%~36.6%)、反対は40%±4.9%(35.1%~44.9%)となる。すると範囲でみると両者は重なる部分がある(下のグラフの赤矢印)ので、「賛成より反対が多い」とは言い切れない。つまり、この400人のアンケートの結果では意思決定をしてはいけないということになる。

《賛成と反対の推計値範囲が重複している。>反対が多いとは言い切れない
400人グラフ

 

 

 

 

 

 

 

これが1,000人のアンケートだった場合、賛成は32%±2.9%=(29.1%~34.9%)、反対は40%±3.1%=(36.9%~43.1%)となり、重なる部分がない(下のグラフの赤矢印)ので、明らかに反対が多いといえる。

《賛成と反対の推計値範囲が乖離している。>反対が多いと言い切れる
1000人グラフ

 

 

 

 

 

 

 

結論としては、アンケートの結果を意思決定に反映したい場合は1,000サンプルのアンケートをしないとならないことになる。

また、2つ目の表にあるように100サンプルのアンケート調査の場合、最大10%の標本誤差がある。これの場合も同様に考えると計測された結果(賛成と反対の値)に20%以上の差がないとはっきりとした判定はできないことがわかる。

もちろん、これらの数字はサンプリング理論に基づいた標本設計・抽出方法を実施した場合に成立するもので、それ以外の方法で対象者を選定した場合はこのような根拠づけはできないことは認識しなければならない。

そのため、この標本誤差だけを信頼性の基点にするのではなく、時系列で同様の調査を行った場合の数字の変化や他の商品の調査との比較において調査の信頼性を裏付けるアプローチもあるので各企業がそれぞれの意思決定手法に対しての標準値・基準値を持つことが重要である。要は関係者がそのデータに信頼を抱ければよいわけである。

マーケティング・リサーチは意思決定のためのツールであるということを忘れてはならない。

次回も「マーケティング・リサーチ」を題材にしたいと思う。