「お得感」を感じた経験が誰にでもあるだろう。
例えば、、、、
1.いつも定価で買っていたソックスがたまたまバーゲンセールで安売りをしていた
2.ディズニーランドでいつもよりたくさんのアトラクションを体験できた
3.いつも電車で10駅先の店まで買いに行っていた輸入食材を地元の店で見つけた
これらは全てまあ偶然感じた「お得感」だが、次のように成果に結びついている。
1の人は、その時にソックスをまとめ買いした → 店からみると客単価が上がった
2の人は、ディズニーランドの満足感が上がった → 店からみるとリピート確率が高まった
3の人は、輸入食材を買うときは地元の店に行くようになった → 店からみると固定客が1名増えた
ということで、「お得感」は成果につながるアプローチツールといえるわけだ。と、捉えると「お得感」とは感じてもらうものではない。感じさせるものだ。だから、感じさせるための工夫が必要だ。
では、「お得感」とは何だろう?
「お得感」とは、購入したモノやサービスの「金銭的な価値」や「金銭に換算した価値」の比較で生まれることが通常だ。同じものなら安い方、同じ値段なら多い方が「お得感」がある。このような「お得感」は常に「価格」や「コストパフォーマンス」のスケールの上での比較になる。そのスケール上で競争するには常に「安いもの」や「イイもの」を提供するしかない。しかし、実は「安くてイイもの」を提供することは極めて難易度が高い。
では、どうするか。実は普段から皆さんも使っているアプローチ方法がいくつかある。
「お得感」を感じさせる別の機軸(スケール)を意識させることで「価格」がもつスケールをずらし、「ありのままで」購入につながる「お得感」を感じさせることができる。
そこで、「お得感」を生み出すアプローチをいくつかあげてみよう。
1.「心理的サイフ」で「お得感」は変わる
「心理的サイフ」は7つの心理的サイフがあり、どの財布からの出費と捉えるかで感じる「お得感」は異なるという考え方。
古典的なアプローチともいえるが、現代でも通用するものなので紹介しよう。
7つのサイフとは、「家族のサイフ」「将来のためのサイフ」「食事を楽しむサイフ」「ライフスタイルのサイフ」「自己投資のサイフ」「挑戦のためのサイフ」「人づきあいのサイフ」である。
それぞれの財布にはその使用目的やその出費で得たいモノやスタイルがある。
財 布 の 種 類 使 用 目 的
家族のサイフ 理想的な家族の構築
将来のサイフ 将来に対する備え(家の備え・人の備え)
食事を楽しむサイフ 生活の質を向上させる
ライフスタイルのサイフ 自分なりのライフスタイルを創出する
自己投資のサイフ 人生を積極的に楽しむ
挑戦のサイフ 未知の分野に挑戦する
人づきあいのサイフ ネットワークを拡げる
●300万円の車を買うことを仮定してみよう。
この300万円を「家族のサイフ」からの出費とするのか、「ライフスタイルのサイフ」からの出費とするのかによって300万円に対する「お得感」が違ってくる。
4人家族で毎週末に家族でドライブに出かけることが家族のだれもが楽しみならば「家族のサイフ」からだす300万円は決して高くはなく「お得感」がある。しかし、「ライフスタイルのサイフ」から出費するのはライフスタイルを実現する父親には「お得感」があるかもしれないが、家族としては自分のためにだけ使ってという心理も働き、「お得感」がないということになる。
●1本3,000円のシャンプーでも「家族用」なら高く感じる奥さんが、「自分がきれいになるため」なら「お得に感じる」かどうかは別にしても毎回毎回買っていくということも心理的サイフで説明ができる。
2.欲求の段階で「お得感」は変わる
マズローの自己実現欲求によるアプローチだ。これも超古典的かつ、マーケティングの定番メニューだろう。マズローは欲求には5段階の構造があり、下位の欲求が満たされると上位の欲求が発生するというもの。5段階の階層は次の通り。
1.生理的欲求
2.安全欲求
3.社会的欲求
4.尊厳・評価の欲求
5.自己実現の欲求
これを「靴」で例えると、
この靴で、もちろん外を歩くことができます。
この靴なら、雨が降っても滑らずに歩けます。
この靴なら、誰に見られても恥ずかしいことはありません。
この靴なら、一目置かれた方に見られますよ
この靴を履いて、あなたも一流紳士の仲間入りをしましょう。
となる。
一般的には高い100,000円の靴でも「一流の紳士の仲間入りができ」「いろいろな人と知り合え」「なんとなくステップアップしたと感じる」ことができるなら、「お得感」がある買物といえる。(ビスポークする人は別ですよ)
これも心理的サイフと同じで、どの欲求に対応する商品と位置付けるか、その機軸を提示することで「お得感」は変わる。
低いレベルの欲求は商品の基本機能を求め、高いレベルの欲求はブランド価値やブランド・ヒストリーを求める。
値段が高くても「お得感」を感じさせるには、買う側の消費者がどのレベルの欲求を持っているのかをつかんで、その心理に合わせてチューニングした売り方の工夫(機軸の提案)が必要だ。
それをするのが販売の仕事であり、マーケターの仕事であろう。