月別アーカイブ: 2014年8月

「共創マーケティング」も第2ステージか?

今、マクドナルドで「共創マーケティング」が行われているのを知っているだろうか。

「みんなのとんかつソース研究会」
とんかつマックバーガーの新ソース開発プロジェクト 

そのプロジェクトのイベントである「とんかつソース全国品評会」に参加するために、先日都内某所までに出かけてきた。この品評会は都内では5店舗のマクドナルドでしか行われていない。(全国でも60店限定)
のぼり

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このプロジェクトの概要は概ね次の通り。(下記、公式サイトや参加者のブログを参考にまとめた)

  1. 6月にプロジェクト参加者を一般(マックユーザ)から募る
  2. プロジェクトメンバーは公募一般ユーザに加えて、ソース・サプライヤーであるカゴメとキューピーの担当者、それにマクドナルド社員(本部商品開発担当と店舗クルー)、ブロガーと味覚コンサルタントが数名という布陣
  3. まず、最初に一般ユーザを除くプロジェクトをけん引する人たちでのキックオフ・ミーティングを開催。ここで商品開発の方向性や評価基準などを設定。
  4. 6月2日の一般メンバー公募から始まって、プロジェクトミーティングを2回開催。
  5. 終了後、「みんなのとんかつソース研究会 」会員認定証を授与。(ここまで6月中)
  6. プロジェクトが開発した「とんかつマックバーガー」用ソースのプロトタイプ2種類とオリジナルの「とんかつマックバーガー」につけたソースと合わせて3種類を大品評会で一般ユーザ(店舗来店者)が試食・評価。(←これは8月上旬。現在、ここのあたり)
  7. 選ばれたソースで「とんかつマックバーガー」を全店展開(予定)。

<プロジェクト全体については以下のサイトが詳しい。>

プロジェクト公式ホームページ  http://www.mcdonalds.co.jp/campaign/tonkatsu/project/outline/index.html#about

 参加者のブログ http://news.ko-zu.com/mcdonalds/

この取組はまさに「共創マーケティング」

これまでは、事業の根幹に関わる商品を作る過程は基本的には門外不出であった。競合企業の眼も気になるし、そもそも成功するかどうかもわからない、あるいは商品化されるかどうかもわからない段階では広く公にすることは憚られていた。故に、これまでの商品開発ではクローズドなFGIや会場テストでの試食評価や最終的には販売エリア限定のテストマーケティングが通常だった。今回は、本体商品が既に販売したことのある「とんかつマックバーガー」のソースの開発ということで様々なリスクは少なくなっているが、表に出なかった商品開発というフェイズに一般ユーザの参加を募り、売る側と買う側が同じ場所で同じ目標に向かってコ・ワーキング(共創)した様子がうかがえる。

外側から見て、「共創」のポイントは以下のようなところ。

  1. 参加者が自らの強い意志とミーティング参加という負担を持って参加していること
  2. 開催場所が「Studio M」というマクドナルドの研究施設。 → モチベーションアップにもなるし、拡散の素材として最適。
  3. マクドナルドだけでなく、カゴメ、キューピーの商品開発担当者も参加。専門性の高い商品が作れそうな体制に本格感がある。
  4. ハンバーガー大好きブロガー(西日本ハンバーガー協会会長)や味覚コンサルタントというエキスパート兼アドバイザーがユーザサイドにいるのでプロジェクト運営の可用性が高い。
  5. 会員証の授与による参加者への達成感と特別感の付与。

さて、6月の開発会議から1カ月を経ての「とんかつソース全国品評会」だ。

残念。

イベント感が全くない。ひっそりと知っている人だけが参加している隅っこ感が、、、、。

それを表しているのが以下の投票ボード。これは「品評会」が始まって3日目の午後の写真。クルーの人に聴いたら当日分ではなく、イベント開始時からの累積でこの投票数らしい。場所は六本木の大型店で、夏休みで平日でもお客さんもほぼ満席状態なのにこれでは寂しい。
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東京で5店しか実施していないイベントなのだから、実施店舗では盛り上がり感というか、お客様を巻き込んで「皆さんと同じ普通のお客様が開発したソースを食べ比べてください。」とか、「開発会議の様子を写したビデオを放映」とか、折角の「共創」を拡散するしくみがリアル店舗においては弱かったような気がする。(中国鶏肉の問題が影響したとは思えないが)

単なる「共創」ではなく、「共創マーケティング」だから、商品開発だけなくその商品を売るしくみへと繋がっていく必要がある。そのための仕掛けが弱かったのが残念。

しかし、「共創マーケティング」といえる取組は少しずつ表に出始めているように感じる。

ドコモ・インサイトマーケティング(ドコモとインテージのリサーチ子会社)で、今年に入って以下のようなテーマで「共創マーケティング」を行っている。

みんレポみらい会議 http://minrepo.com/mirai/

第1回 「未来の健康ドリンクを考える」
第2回 「未来のコスメを考える」
第3回 「ハンバーグに合う!?夢のデザートを考える」 (俺のハンバーグ山本)
第4回 「あったらいいな、こんなおやつ♪」 
第5回 「~夢のうどんメニューを考える♪~」 (はなまるうどん)

この2つの事例だけでも「共創マーケティング」の考え方と方法論を取り入れた商品開発プロジェクトがそのプロセスを拡散・共有することで共感を呼ぶだけでなく、プロジェクトで関与した方が事業者側の立場でプロモーションする展開までも視野に入れてき始めている。

そうなるとわれわれサービサーサイドにも、商品開発を支援するマーケティングリサーチ的ノウハウだけでなく、そこからはじまって最終ゴールである売上獲得につながるセールス・プロモーション的ノウハウを一体で提供することが求められてくるだろう。

まだまだ途上にある取組だと思うが、工夫次第で大きな流れになる可能性を感じる。

 

 

インフォグラフィックス

人類は洞窟壁画という最初のインフォグラフィックを生み出し、文字より早くから情報伝達手段として絵柄・図形を使っていた。つまり、インフォグラフィックスはコミュニケーションの原点ともいえる。(上はラスコー洞窟壁画:Wikiより)

一般に「インフォグラフィックス」とは何を指すのだろうと思う人もいるので、Wikiによると

「インフォグラフィックは、情報、データ、知識を視覚的に表現したものである。インフォグラフィックは情報を素早く簡単に表現したい場面で用いられ、標識、地図、報道、技術文書、教育などの形で使われている。また、計算機科学や数学、統計学においても、概念的情報を分かりやすく表現するツールとしてよく用いられる。科学的情報の可視化にも広く適用される。」

とある。

マーケティングにおけるインフォグラフィックスの事例

様々なインフォグラフィックスがある中で、もっとも日常的なインフォグラフィックスは何といっても「地図」だろう。地図は物理的に存在する地形、道路、鉄道、家屋などを平面上に表現しているものだが、さらにその上に様々な情報を掲載することで必要なメッセージを送っている。

 「世界の日本食レストラン」

「どんぶり」をモーチフにビジュアル表現したもの。最も日本食レストランが多い都市が「ソウル」ということが一目でわかる。

日本食レストラン

(出典:http://tg.tripadvisor.jp/washoku/)

 

地図に次いでなじみが深いのは「グラフ」。

下のインフォグラフィックスはインターネットで使用されている言語を2000,2005、2011の3時点で比較したもので、英語の比率が下がり、中国語の比率が高まっていることがわかる。これは単純な円グラフを3つ重ねているだけだが、デザイン処理をしているためにexcel出た作ったグラフよりはメッセージが伝わってくる。
円グラフ

(出典:http://www.techinasia.com/dominant-languages-on-internet-english-chinese/

次のインフォグラフィックスはモバイルコンテンツ市場規模をチャートに表したもの

2004年
モバイルコンテンツ1

2008年
モバイルコンテンツ2

2013年
モバイルコンテンツ3

(出典:http://visualizing.info/article/4701.html)

こうやって時系列で並べると、2004年~2013年までのモバイルコンテンツ市場がどのように変化したのかがわかりやすい。

マーケターの人は比較的数字を見慣れているから、数字だけでもデータが発信するメッセージが見えてくるが、一般の人にはなかなかそれが難しい。

インフォグラフィックスにはデータをメッセージにする力がある。

さて、次はOK Wave総合研究所様が出している調査レポートのインフォグラフィックスである。

このインフォグラフィックスを見るだけで、住宅購入前後に男性と女性が考えていることが全く違うことがよくわかる。詳細なデータは見ていないが、男性の住宅購入前の関心事は「転職」と「債務整理」、すなわち、マイホーム=住宅ローン(負債)という価値観がうかがわれ、女性は「妊娠・育児」となっており、マイホーム=子育て環境との価値観がわかる。
非常に示唆に富むインフォグラフィックスである。

OK

(出典:http://www.okwave.co.jp/ri/labo/report/201406residence/index.html)

 メラビアンの法則

さて、インフォグラフィックスが持つ視覚情報の優位性を考える時に思い浮かぶのが「メラビアンの法則」だ。メッセージを受け取る側はその意味を解釈する際に、「言語情報(言葉で説明される内容)からは7%の影響しか受けず、聴覚情報(耳から入ってくる声の質や会話の早さ、口調など)からは38%の影響を受け、視覚情報(見た目や表情、形状など)からは55%と過半数の影響を受ける」というもの。一言で言えば、コミュニケーションには視覚的要素、すなわち、ビジュアル化したものが欠かせず、その役割は非常に大きい、という意図とで使われることが多い。

 余談というか、アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが1971年に提唱したものだが、実際に行った心理学実験と上の「」内で言われていることではかなり違っている。デフォルメされている。メラビアンの行った実験については、「天使と悪魔のビジネス用語辞典」(http://www2u.biglobe.ne.jp/~hiraki/d74.htm)に詳しく記述されている。

マーケターも昔はインフォグラフィックスどころではなく、グラフ1つ描くのにもグラフ用紙に定規を使って鉛筆でグラフを描いていた。グラフの柄はスクリーントーンを1つ1つ貼っていた。(すごい時代だった!!)

今ではExcelやBIツール(弊社ではQlikView)を活用して下のようなチャートを簡単に作成することができる。(便利になった!!)

Excelで作った3次元データを使ったバブルチャート
バブルチャート

QlikViewで作ったメッコチャート(RF分析)
メッコチャート

 

 

 

 

 

 

データを見たがる人は、2つの相反する要望を持っている。

●できるだけたくさんのデータがあることの安心感

●できるだけ少ないデータで説明できる(理解できる)わかりやすさ

この2つの要望を紙面(レポートなど)で満たすのは結構むずかしい。プレゼンテーションの場があって言葉で補足できればいいのだが、それがない時は要望を満たせるか心配だ。

そんな時に、インフォグラフィックスをアプローチは非常に効果的だ。デザイナーではなくてもセンスのあるインフォグラフィックスを使いこなせるようにならないと。