8月8日(木)に東京メトロ永田町駅に「Echikafit 永田町」がオープンしたので、早速、夜と朝によってみた。
東京メトロのニュースリリースによると、●施設コンセプトは「いつでも誰でも気軽に立ち寄れる“ カフェテリア カルフール(交差点)”」、●施設環境は「ネオクラシカル(Neo Classical)」として、レンガの素材感を活かした施設デザインとLED照明の導入で環境負荷を低減しているとのこと。
●店舗構成をみると、店舗面積は131坪で7つの飲食店・食物販店が入り、うち全国初出店が5店舗となっている。
乗り換え客がターゲット
永田町駅は有楽町線、半蔵門線、南北線の3つの路線が交わり、1日11万人が乗り換える駅だ。この施設のキャッチフレーズは「乗り換えグルメ、はじまる」となっており、ターゲットは乗り換え客を狙っているようだ。(というか、乗り換え客しかいない場所だが)乗り換え客といっても、通勤客や通勤ではないビジネス利用客、買い物客など様々な利用目的の人がいる。
本来、このような乗り換え客の一時利用を取り込む商業施設(飲食施設)に必要な要件は「何を売っている店かすぐにわかること」「パッと入って、サッと食べて、スーッと出ていけること」だ。これまでなら、いわゆる「駅そば」や「ミルクスタンド」が最適業種といえる。食事をすることを目的に永田町駅を訪れる人はほとんどいないし、そのようなニーズは顕在化していない。
ところが、Echikafit 永田町はそれとは真逆といえる。Echikafit 永田町の特徴をあげてみよう。
Echikafit 永田町とはナニモノだ!?
(1)「選ぶ楽しみ」が改札の中で
業態はフードコートスタイルのフリーシートで、入口のカレーショップ(ここだけはメトロ直営)以外はパッと見て何を売っているかわからない。しかも、ウナギの寝床のように奥に向かって細長い地形となっているので中に何があるのかはエントランス部分からは見えない。他の場所に例えるならば、駅ビルのレストラン街を歩いていくイメージがぴったりだ。規模は小さいが、これまで駅にはなかった「選ぶ楽しみ」がある。
(2)ちょっとではなく、「ガッツリ」
また、いわゆるカフェメニューだけでなく、定食のようなガッツリ系のメニューも充実している。(鉄板焼や焼魚・煮魚定食、肉そばなど)値段も1品1,000円を超えるものまであって、「ちょっと立ち寄って小腹を満たす」業態ではないことは明らか。誰が駅でガッツリ定食を食べるのだろうか?
(3)おひとり様大歓迎
席の作り方も興味深い。1人様用のカウンター席(図書館風)やボックス席が多く用意され、PCをつなぐコンセントも8割の席についている。食事だけでなく、デスクワークもおひとり様用だ。「おひとり様も入れますではなく、2名様以上でも利用できます」といえるくらいの振り方は潔い。
(4)急がないシックな空間
おひとり様の業態によくあるファストフード的なチープな空間ではなく、全体をレンガ基調でとりまとめ、少し粋でシックな空間を提供している。そこには駅の乗り換えの喧騒・スピード感から少し距離をおいたゆっくりとした時間が流れている。敢えて、空間と時間を商品として提供しているように思われる。
Echikafit 永田町はスタバか?
このように特徴を並べてみると、何とはなしに「スタバ」が思い起こされる。ドトールをはじめとする低価格コーヒーショップが台頭する中で、スターバックスは日本にやってきて、グルメコーヒーだけでなくその独自の空間とコーヒーショップの楽しみ方、使い方を教えてきた。
Echikafit 永田町は11万人のハイポテンシャルなトラフィックを背景に、利用目的・利用シーンを絞り込んで、これまでそこに無かったニーズを顕在化させようとしている。11万人の100分の1である1,000人のニーズを顕在化させれば成功といえるのだろうか。実際に利用してみると、いろいろオペレーション上の不都合は目につくが、そこに行く目的のなかった永田町駅に目的を生み出せるかどうか、今後が楽しみだ。