グランドセイコーはLEXUSになれるか?!

「グランドセイコー」をリブランディング

セイコーは日本の老舗腕時計メーカーでシチズンと並んで巨頭である。そのセイコーが、リーダーブランドである「グランドセイコー」のブランド強化に乗り出すという記事が先日新聞に掲載されていた。

セイコー 「GS」てこ入れ <以下、引用> : 2017年3月22日 日経新聞 朝刊

セイコーホールディングス(HD)は高級腕時計シリーズ「グランドセイコー(GS)」のブランド力強化に乗り出す。文字盤から「SEIKO」のロゴを外し、売り場デザインも一新する。主力ブランドの大規模な改革は創業以来初めて。価格とブランドイメージを引き上げ高級時計に強いスイス勢に対抗する。
現在は文字盤の12時の位置に「SEIKO」、6時の位置に「GS」のロゴを入れているが、今後は12時に「GS」を置く。24日に限定発売する初代グランドセイコーの復刻版から採用する。店頭には5月から、新たなロゴ配置にした商品を順次供給する。(以下、略)

伸びる国内高級時計市場

さて、この10年間のウォッチ(腕時計)市場の動きをみたのが次のグラフだ。リーマンショックで一度沈んでから順調に出荷金額は伸びている。特に国内向け出荷台数は横ばいだが金額は大きく伸び、高価格帯の市場が拡大していることが伺われる。

グランドセイコーはこれまで50万円~70万円を中心に展開していた。もちろん、この価格帯も普段使いの腕時計としては高いと思うが、海外高級腕時計ブランドが支配しているのが100万円を超える高級時計市場だ。この高級時計市場ではロレックス、オメガ、カルティエ、などの欧州ブランドが7割以上を占めているそうだ。この伸長著しい市場において海外勢を駆逐するのが「新」グランドセイコーの役割である。

トヨタの高級市場戦略

時計と自動車と製品は違うが欧州ブランドの台頭する高級市場を開拓した似たような事例はトヨタだ。欧州ブランドの高級車が日本において足場を固める以前の日本の高級車市場で中核をなしていたのはトヨタの高級車、クラウンだった。トヨタは「いつかはクラウン」(1983)のコピーでブランドヒエラルキーの頂上にクラウンを位置づけ、届かない夢ではなく、いつかは手が届く目標としてブランディングした。つまり、カローラ→コロナ→マークⅡと乗り継いで階段を上っていくと、最終的に昇り詰めるところにいるのがクラウンだった。

海外で成功したLEXUSのブランド戦略

しかし、バブル経済崩壊後の高級市場は、中流社会の先にある階段を昇れば行けるところではなくなっていた。高度成長時代の1億総中流意識のゴンドラを次々と担ぎ上げていく感覚の「いつかはクラウン」戦略は通用しなくなっており、その後のグローバル市場でのトヨタの高級車戦略を成功に導いたのは、先行して海外市場へ投入した「LEXUS」ブランドだった。トヨタは海外市場で高級ドイツ車たちと戦い、勝ち得た評価を国内市場にフィードバックし、これまであったトヨタ車のヒエラルキーとは違うものとしてLEXUSブランドを位置付けた。

「新」グランドセイコーは時計のLEXUSを目指す?

「新」グランドセイコーが当面目指しているのは国内高級時計市場だ。欧州勢に奪われているシェアを取り戻し、市場成長の恩恵を確実に享受できる地位を獲得することにあるはずだ。しかし、これまでのセイコーブランドの延長線上にはそこへ昇る階段はない。「新」グランドセイコーで海外の評価を受け、それをどの様にフィードバックするのか? 機能や品質では世界一流の評価を得ていてもそこに欧州の高級の香りをどのように付け加えることができるのか? 必要なのはモノづくりだけではない、イメージ戦略であり、情報戦略だと思う。

ブランド体験の場

LEXUSの高級ステイタスを築いた大きな要素にショップ(ディーラー)がある。初期のサービス基準をホテルに倣い、それまでの自動車販売店とは異なる体験を生み出していった。中でも、「レクサス星ヶ丘の軌跡」と言われるような体験は、感動を生み、ストーリーとして語られ、伝説となっていった。

一言でいえば、「すごいな!LEXUS」だ。

グランドセイコーのブランディング拠点が以下のブランドショップだ。
・セイコープレミアムブティック (東京・大阪) 2店舗
・セイコープレミアムウオッチサロン   36店舗

セイコープレミアムブティック(銀座)

登場時のLEXUSの販売店でのブランド体験はそれまでのカーディーラーとはステージを異にする素晴らしい感動があった。

グランドセイコーもこの拠点で「グランドセイコー」のブランド体験ができるはずだ。そこには、LEXUSと同様の感動の接客や安心のサービス、さまざまなブランドのストーリーを知ることで、値段以上の価値があることを実感し、パーソナライズされた「私のグランドセイコー」を体験できるだろうか。
(本当なら店名に”GrandSeiko”を使いたいところだと思う。いろいろなしがらみがあるのだろうが。)

いつか「すごいな!グランドセイコー」と言われることが本物の高級ではないだろうか。

 

マクドナルドは見下すことで顧客支持を獲得した!

昨年後半あたりから、マクドナルドは復活した、などの記事やコメントを見かけるようになった。実際、数字を見ても昨年は2年連続の赤字を乗り越えて再び黒字を迎えられそうだ。
最近、マクドナルドの店舗を利用していると、ピークタイムは顧客で店内があふれていることが多い。
住宅街の平日・昼間なら、幼児を連れた若い主婦、休日はファミリー、中高校生が多く、ビジネス街ではビジネスマン、OL、と、それぞれの立地にふさわしいマス顧客を確実に獲得しているようだ。

マクドナルド衰退の経緯を見てみよう。


2014年3月 原田氏 社長退任
2014年3月 カサノバ氏 社長就任
2014年11月 中国で期限切れ鶏肉問題発生
2015年1月 異物混入発生
2015年4月 ビジネスリカバリープラン発表
2016年7月 「ポケモンGO」とコラボ展開

・マクドナルドは実は原田社長時代に既にダウントレンドに入っており、FC化の推進によって増益だけは確保してきていた。つまり、鶏肉問題などの一連のトラブルが売上低下の原因ではなく、震災以降の消費マインドの冷え込みを見誤ったなどと言われていた。

起死回生を担う「ビジネスリカバリープラン」とは以下のような内容で、とても、ベーシックなものだった。

(1)よりお客様にフォーカスしたアクション
・メニュー改訂
・クーポンアプリ
・お客様とのつながり
(2)店舗投資の加速
(3)地域特化型ビジネスモデル
(4)コストと資源効率の改善

これらを一言でいえば、「お客様本位になろう」というものだろう。

<そして、成功の要因は>
自らの客は「大衆」であり、「フォロワー」であるということを再認識した施策が功を奏している

・顧客は大衆なので、安全・安心情報をわかりやすく「わたくしごと」にして発信した

→ 人のうわさも75日で徐々にマイナスは減っていった
→ 品質に対する心配やアレルギー問題などをわかりやすくコミュニケーションした
→ 安全・安心に関心の高い人から情報が伝わるようなしくみを作ったことで、フォロワーであるお客様の信頼性が回復した

・顧客はフォロワーで、「ハンバーガー好き」というわけではなかった

→ メニューは構造がわかりやすく、オーダーしやすくなった
→ 基本価値である食べることの価値が鮮明になった
→ おいしさ・味は大きく変わらなくとも問題ない
(もともと不味くはないし、味でマクドナルドを選んでいるわけではない)
→ 「高いなあ」という声がなくなった → メニューのコストパフォーマンスが高い
→ 今、何が売り物なのかがわかる

・顧客は「サイレント・マジョリティ」、自ら意見は言わない

→ カサノバ社長が自ら顧客インタビューをしたり、アプリを使って顧客の声を集めている
→ KODOというアプリの効果は疑問符だが、企業が行うヒアリングは有効だ。
→ 特に、マクドナルドに来なくなったお客様を集めてその理由を聞いているのはとても良いことだ。
店に来ている客に聞いてもマクドナルドに行かない理由はわからない。
→ ここまではほかの企業ではなかなか行っていない

過去にマクドナルドが凋落した要因は顧客を大切にしたがあまり、顧客を「大衆」「フォロワー」であることを忘れたためだった。それを改めて、「大衆」「フォロワー」として認識しなおしたので、マクドナルドは再び大衆=マス市場からの支持を獲得できた。

上司に反論したから成功したチョコレート

先日、バレンタインデーに下のニュースが掲載されていた。

上司に反論「あなたの年代がターゲットではない!」 計画の2倍も売れたチョコ 開発の経緯を明治に聞く
withnews 2/14(火) 7:00配信

この記事で気になったポイントは以下の3点。

「実はこの商品、以前発売されたものを昨年9月に大幅リニューアルしたものなんです」と話すのは、菓子マーケティング部の佐藤政宏専任課長(44)。

(1)価格は一般的な板チョコの倍以上で売られています。

(2)他のチョコと比べて特徴的なのが、そのパッケージ。通常はチョコの写真や商品名、味の特徴などが大きく描かれていますが、この商品ではいずれも目立たない扱いになっています。

(3)商品化に向けて話を進める中で、上層部からも「このパッケージでは中身がわからない。売れるはずがない」という意見が出ました。
実際に売り場を再現して、他の商品と一緒に並べてターゲット層である女性がどう反応するかを調査したところ、結果は好評。調査で好感触を得ていた佐藤さんたちは「あなたの年代がターゲットではない」と反論。なんとか販売にこぎつけました。

(1)価格が板チョコの倍以上。しかも、大きな売り場面積を獲得

この「meiji THE Chocolate」は220円と通常の板チョコの倍以上の値付け。コンビニエンスストアに買いに行くと、味が6種類あって6種全部が店頭定番で平積陳列されている。
チョコレート市場自体が成長しており、小売りベースで5千億円を超えている(2015年)とはいえ、高単価のプレミアム系商品でコンビニの過当競争の棚で6フェイス確保はスゴイ。

(2)パッケージデザインの工夫

この商品のパッケージはチョコレートの写真・イラストはなく、シンプルなベージュのボックスタイプのパッケージ。
質感はやや違うが、段ボール箱ぽい素朴さを感じる素材で、所謂チョコレートらしさがない。内側も柄があり、食べ終わった後に再利用もできそう。

このチョコレートらしくないパッケージが若い女性にとっては、”かわいい”らしい。

 

(3)上層部の反対意見を消費者調査を根拠に論破

商品が売れるかどうかは、上司が判断するべきではなく、実際にお金を出して購入する消費者がどう行動するかで判断するべきであるという当たり前の話である。しかし、実は消費者の判断より社内の判断(上司の判断)が優先されている方がはるかに多いことは商品開発や広告に携わっている人はみな感じていると思う。

明治という歴史のある会社で、今回はデータオリエンテッドな意思決定ができたということだ。しかし、それがトピックになるということは、逆に言うとこれまでは上層部の一声(勘と経験と根性の3K)が勝っていたことを裏付けてもいる。

特にこの(3)については、マーケティングにおける上司の役割・上層部の役割は、正しい手法で課題にアプローチしているかどうかを指導・管理することであり、意思決定そのものを上層部に期待しているわけではない。上層部が判断することには、何らの論理的合理性がない。このことは費用をかけて消費者調査を実施するか否かという前に、企業としての成熟度やスタンスの問題と言わざるを得ない。

企業の意思決定を支援している立場から経験的に言えば、売上40億円から100億円以下の企業では非合理的な意思決定をしているケースが多くみられる。消費者調査にコストを掛けることが必須ではなく、商品の評価に対する企業の意思決定に消費者の声を入れることが重要だという認識がないのではないか。

その壁を乗り越えたところに、商品を市場に出して失敗する確率を減らし、成功率・ヒット率が上がって、トータル的にはコストメリットも出るという企業として当たり前に選択すべき世界があることが体験されていないことに理由があると思っている。

「オフィスグリコ」のシェアをハフモデルで計算してみる

「オフィスへの置き売りビジネス」の記事が先日の新聞に掲載されていた。
置き売りビジネス

有名なところで「オフィスグリコ」や「ネスカフェアンバサダー」があげられているが、それ以外にも野菜のオフィスへの宅配などもある。

この「置き売りビジネス」の特徴は、消費者あるいは消費地の近くに商品を置いておくことだ。
これまでは「オフィスグリコ」の商品であるお菓子は「コンビニ」「スーパー」の売場におかれていたが、それが「オフィスグリコ」では売場が「オフィス」に移った。

このことをマーケティング視点からみると、2つのことがわかる。

1つ目は売場までの物理的距離が縮まったことになる。(もちろん、それによって時間距離も縮まった。)
まだ、買ってもいない商品が、行ってもいない売場がオフィスに出現していることになる。これはB2Cのビジネスではあまりないことだ。

この状態を、流通業の出店時に利用する「ハフモデル」という売上予測モデルでこのケースを考えてみよう。ハフモデルは売上は(住居と売場の)距離の自乗に反比例し、売場面積に比例するという売上予測モデルである。なお、このケースでは、売場面積の代わりにお菓子の「アイテム数」を代替にする。

このハフモデルによるとオフィスグリコで買物をする確率は、
すべての店での(お菓子のアイテム数)÷(その店までの距離の自乗)を累計したものに対するオフィスグリコでの(お菓子のアイテム数)÷(その店までの距離の自乗)で表すことができる。
オフィスグリコ確率計算式

 

 

 

仮にお菓子はコンビニだけで買って、オフィスの近くには3店のコンビニがあるとする。
それぞれのコンビニへの距離とその店のお菓子のアイテム数は以下の通り。
A店       100メートル   300アイテム
B店       300メートル   250アイテム
C店       500メートル   500アイテム
オフィスグリコ   0メートル   30アイテム

これを計算式に代入すると「オフィスの人がお菓子をオフィスグリコで買う確率は99%」となる。

計算間違いかと思うほど高い数値だが、実際そのようになるのは実感としてはよくわかる。わざわざオフィスを出てコンビニまでお菓子を買いに行くことは何かのついでがない限りほとんどなくなる。

わずかストッカー1~2個で、わずか30アイテムの品ぞろえのオフィスグリコの影響で近くのコンビニにお菓子を買いに行くことはほとんどなくなってしまう計算だ。

この計算結果が示唆するものは、

売場と買い手の距離を縮めることがどれだけシェアや売上に影響を与えるのか、

ということだ。

 

もう一つの変化は、

お菓子の販売というB2Cの販売モデルにB2Bの販売モデルを取り入れたことだ。

オフィスに後払い精算のビジネスモデルはコピー機、複合機をはじめとして通信費、宅配便など様々ある。オフィスグリコはまさにそれらと同じでB2B型でお菓子を販売していることになる。

このB2B型ビジネスモデルの特徴は売り手と買い手の間に信頼関係をベースに機材を常設することだ。

コピー会社や通信会社はオフィスに入ると高いシェアを獲得する。それと同じようにオフィスグリコも高いシェアを獲得している。その共通点はコピー機なり、ストッカーなりをオフィス内に設置していることだ。そして、その収益をその機材ではなく、消耗品やお菓子などのランニングで稼いでる点である。

つまり、オフィスグリコはお菓子のコピー機ビジネスである。

オフィスは残された消費財市場である。そこは普通の消費財ビジネスモデルで攻め入るのは難しい。だから、これからも「オフィスグリコ」や「ネスカフェアンバサダー」のようなビジネスモデルは今後静かに浸透していくはずだ。

顧客視点を本当に持っていますか?

今日の朝日新聞朝刊「波聞風問」で、先週のWorld Marketing Summit Japan 2014の話題に触れている。
タイトルは

「マーケティング後進国 日本企業、より顧客目線で」

である。

2014-10-05 13.31.29

その中で「マーケティングとは。日本では「市場調査」と置き換えられたり、多くの企業では広告・宣伝、販売促進などの業務を表したりする。」というくだりがある。「マーケティング」を市場調査とする企業はボケなすだが、「マーケティング」の定義自体はやはり企業によりさまざまである。

もちろん、時代により「マーケティング」を含む業務や求められるものは変化しているのだから「マーケティング」の定義も変わってしかるべきだ。製品の機能による優位性を構築していた時代から、製品の優劣では違いがなく時代にはより顧客の近くにいる企業・製品が選択されるようになっている。この記事の本題は見出しにある

「より顧客目線で」だ。

随分昔から「顧客主義」「顧客中心」などの言葉で言われてきたことだが、未だに「製品主義」「機能主義」「プロダクトアウト」の発想から抜け出せずにいたことが指摘されている。コミュニケーションの視点から言えば「機能訴求」と「ベネフィット訴求」の違いになる。

そして、一橋大学の上岡教授は

「経営陣から、そして、全社的に顧客ニーズを重く見る方向性を確認すべきだ」

と指摘している。

この朝日新聞の記事と共に注目したいのが、ネスレの高岡社長のインタビュー記事だ。

「経営とは、マネジメントではない。マーケティングである。」

ネスレ日本 代表取締役社長兼CEO 高岡 浩三氏

ネスレ高岡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「常にどうしたらお客様に価値を感じていただけるような提案ができるかを考えるのがマーケターの仕事です。」
「ネスレグループの執行役員は約30名ですが、そのほとんどがマーケター出身。これはネスレグループに限らず、グローバル企業では普通のことだと思います。一方、日本の企業ではマーケティング部門よりも営業や製造部門出身のトップが多くいらっしゃいます。」

どちらも「顧客視点」を持つことに難しさに触れると共にそこへのアプローチとしては経営レベルからマーケティングを理解している人材を揃える必要性に触れている。

人が変わらなければ、企業は変わらないということであり、モノづくりや営業中心から脱却することが企業としてのマーケティングを実践するためには必要だということだ。

モノを売る、モノを作るという視点から、一旦離れないと、メーカー企業のマーケティングは成り立たない時代になっている。

 

オンライン化する国勢調査は何を映すのか!?

「平成 27 年国勢調査実施本部」が10月1日に発足した。ニュースでも発表されているが、この国勢調査から調査方法が大きく変わる。総務庁発表の資料でも以下のように「ビッグチャレンジ」との表現を使っている。

 平成27年国勢調査における『ビッグチャレンジ』

  • 日本初の取組 : 全国津々浦々でオンライン調査を実施(オンライン調査の全国展開)
  • 世界最大規模の調査 : オンライン回答は約1000万世帯超を想定
  • 先進的な調査方式 : スマートフォン調査システムの導入・オンライン調査の先行実施

「世界最大規模の調査」という表現で、「世界最大」と言い切らないところがお役所らしいのですが、それでも1千万世帯をオンラインで調査とはスゴイ!日本全体で5千万世帯余りだから20%以上はオンラインで調査するというか、対象世帯がオンラインで回答してくれると目論んでいることになる。

~以下、「平成27年国勢調査の実施に向けて」(総務庁統計局)より引用~

国勢調査の流れ

オンライン調査、それも家庭への普及・利用率をみると、多分スマートフォンによる回答が多いと思われ、。まさに「スマホファースト」である。このあたりも含めて、役所とは思えない柔軟かつ先進的取り組みと評価したい。(確かにこの機会を逃すと次は5年後になり、そこでオンライン調査に取り組んでは時代遅れ感が大きく、評価されずに批判されるだけだろう。)

オンライン化は、調査予算の削減、工程の短縮化(データの電子化)など様々なメリットも生まれるだろう。また、答える方も調査員と会ったり、時間を調整したりなどの時間が短縮できる。(ちなみに平成22年の国勢調査には調査員70万人、予算600億円超が費やされた。)

実際の国勢調査の実施は平成27年10月1日からとなる。社会調査だけでなく、マーケティングリサーチ業界においてもエポックになることは必須だろう。

ところで第1回の国勢調査は100年以上前の1920 年(大正9年)に実施されている。前述の統計局の資料の中で第1回当時と現在を比較する資料が添付されていたので、いくつか抜粋して紹介したい。

~以下、「平成27年国勢調査の実施に向けて」総務庁統計局より引用~

第1回といま

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • 人口は倍以上に増え、世帯数は4倍強になった。(世帯人員数が減ったということ)
  • 平均寿命も男女ともほぼ倍になっており、年齢別の人口構成も大きく変化している。
  •  さ産業構造をみると就業人口は1920年当時は第一次産業が半数以上、現在は第3次産業が7割以上となっている。
  • 製造品出荷額に至っては、60億円→289兆円余りと4万8千倍以上に増えている。

同じ日本とは思えない!!  全く違う国のようじゃないですか!!

100年も前なのか、100年しか経っていないのになのか、は見方次第ではあるが、100年間で日本がこんなに変わったと実感できるのも「国勢調査」があるおかげである。(表中データは国勢調査以外もあるが)

ということで、

国勢調査は「時代」を映している

という用意したような締めの言葉につなげて終わりたい。

 

 

 

 

成城石井とローソン

ローソンが成城石井を買収して子会社にするというニュースが流れている。2つのブランドの現状をみると少なくとも外側からはそれぞれが成長ベースにあり、それぞれの業界においてどちらも負け組ではないようだ。

業種の中でのポジションをみると、ローソンはCVS業界2番手でトップのセブンイレブンには大きく水をあけられており、肉薄するファミリーマートと2番手の地位を競っているように見える。その成長率をみるとセブンイレブンに比べてローソンの成長率は低い。

コンビニトップ3売上推移

次に、成城石井の指標をみると、レックスインターナショナル傘下時代にはいろいろあったようだが、食品スーパーとして小売デフレの時代に堅調に推移してきているといえそうだ。

2004年2月期の連結売上300億円(103%)、営業利益13億円(4.5%)

2013年12月期の連結売上544億円(105%)、営業利益は33億円(6.1%)

合併のシナジー

この2つのように類似業種の異なる業態のブランドが一緒になると、そのシナジーはあるのか、どんな工夫をするとシナジーが高まるのかという視点が必要になってくる。シナジーを考える時の1つの視点は、ローソンと成城石井のそれぞれの店舗を入れ替えたらどうなるかということだ。

ちなみに職場の近所に道路を1本挟んで成城石井とローソンがある。店舗の売場面積で見ると成城石井は100坪程度、ローソンは40坪程度と倍以上違う。当然、商品構成は異なるが、ローソンの40坪の中身を成城石井の商品で埋めてみることを想像しよう。

ローソンの変化形としては、高級コンビニになるのか、自家製高級惣菜・弁当のあるコンビニになるのか、輸入食品がたくさんあるコンビニになるのか、というような選択肢がある。立地条件によるだろうが、どれも既存のローソンに魅力を加えることができ、他のコンビニエンスストアにはない特徴を打ち出すことができる。

逆に成城石井の中にローソンを入れたケースを想像すると、パンなら自家製パン~大手メーカーのパンまで価格も含めて幅広い品ぞろえができ、飲料なら輸入品やNBだけでなく、ローソンのPB飲料までの幅広い品ぞろえになる。このような変化にはあまり食指が動かない。
また、ローソンのMachi Cafeが成城石井の中でも飲めるようになる(ローソンはこの施策の導入はしないと言っている)などの展開も想像できる。これは付加価値が付くような気がする。

それぞれを天秤に掛けてみると、成城石井にとってこの買収・合併はあまりメリットがなく、ローソンにとっては様々な業態の変化をもたらす可能性がある。(だから、ローソンが仕掛ける意味があるのだが。)

もちろん、シナジー効果というときは上記のMDの問題だけでなく、人材面、ノウハウ面、資金面などいろいろな視点はあるが、中身を入れ替えてみることで見えてくるものは実はユーザ、利用者視点では重要なことだと思う。

マクドナルド、変れるか!!

本日のMJの1面で「マック離れ深刻 6割」と題して、1年前よりマクドナルド利用回数が減った、またはいかなくなった人が6割に上る調査結果を出している。使用期限切れの鶏肉使用問題の余波は大きく、その信頼性は大きく毀損している。顧客に対して、責任は業者にあるようなコメントをしたり、ごく一部のことでしかないなど、あたかも部外者で被害者を装う謝罪会見は最低のものだった。

1面全体

 

そのことの結果が売上25%ダウンという数字に表れた。

記事の中でお客様アンケートで「どんな商品が足りないか?」という質問に対する回答として
「食材の安全性が高い商品」
「安い商品」
「ヘルシーな商品」
の3つが多く方から挙げられていた。

足りない商品

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鶏肉問題があったので「安全性」の要望が高いのは当然だし、また、「低価格」を求める回答もどんな調査をしても出てくる要望だ。

ここで着目すべきは、本質的な問題として「ヘルシーな商品」を求める人がこんなにいるということだ。

先日も以下のエントリーの中で、マクドナルドには「ヘルシー感」が不足していることを指摘した。

http://ethicalive.jp/jy_columns/?p=1346

今回の調査で「ヘルシー感」については検証された訳だが、何故マクドナルドはこのようなユーザの声に気がつかなくなったのだろうか。

通常、ユーザの声に気がつかないのは社内のスタッフが客を見ずにトップを見ているケースだ。

今回はMJの別のページに本部担当のコメントが出ている。

ヘルシーさニーズへの対応

今回はユーザの声が届いたようだ。単にメニューを見直すだけでなく、体質改善からマクドナルドには取り組んでもらい、復活への第一歩を歩みだして欲しい。

「共創マーケティング」も第2ステージか?

今、マクドナルドで「共創マーケティング」が行われているのを知っているだろうか。

「みんなのとんかつソース研究会」
とんかつマックバーガーの新ソース開発プロジェクト 

そのプロジェクトのイベントである「とんかつソース全国品評会」に参加するために、先日都内某所までに出かけてきた。この品評会は都内では5店舗のマクドナルドでしか行われていない。(全国でも60店限定)
のぼり

2014-08-06 13.30.19

 

 

 

 

 

 

 

このプロジェクトの概要は概ね次の通り。(下記、公式サイトや参加者のブログを参考にまとめた)

  1. 6月にプロジェクト参加者を一般(マックユーザ)から募る
  2. プロジェクトメンバーは公募一般ユーザに加えて、ソース・サプライヤーであるカゴメとキューピーの担当者、それにマクドナルド社員(本部商品開発担当と店舗クルー)、ブロガーと味覚コンサルタントが数名という布陣
  3. まず、最初に一般ユーザを除くプロジェクトをけん引する人たちでのキックオフ・ミーティングを開催。ここで商品開発の方向性や評価基準などを設定。
  4. 6月2日の一般メンバー公募から始まって、プロジェクトミーティングを2回開催。
  5. 終了後、「みんなのとんかつソース研究会 」会員認定証を授与。(ここまで6月中)
  6. プロジェクトが開発した「とんかつマックバーガー」用ソースのプロトタイプ2種類とオリジナルの「とんかつマックバーガー」につけたソースと合わせて3種類を大品評会で一般ユーザ(店舗来店者)が試食・評価。(←これは8月上旬。現在、ここのあたり)
  7. 選ばれたソースで「とんかつマックバーガー」を全店展開(予定)。

<プロジェクト全体については以下のサイトが詳しい。>

プロジェクト公式ホームページ  http://www.mcdonalds.co.jp/campaign/tonkatsu/project/outline/index.html#about

 参加者のブログ http://news.ko-zu.com/mcdonalds/

この取組はまさに「共創マーケティング」

これまでは、事業の根幹に関わる商品を作る過程は基本的には門外不出であった。競合企業の眼も気になるし、そもそも成功するかどうかもわからない、あるいは商品化されるかどうかもわからない段階では広く公にすることは憚られていた。故に、これまでの商品開発ではクローズドなFGIや会場テストでの試食評価や最終的には販売エリア限定のテストマーケティングが通常だった。今回は、本体商品が既に販売したことのある「とんかつマックバーガー」のソースの開発ということで様々なリスクは少なくなっているが、表に出なかった商品開発というフェイズに一般ユーザの参加を募り、売る側と買う側が同じ場所で同じ目標に向かってコ・ワーキング(共創)した様子がうかがえる。

外側から見て、「共創」のポイントは以下のようなところ。

  1. 参加者が自らの強い意志とミーティング参加という負担を持って参加していること
  2. 開催場所が「Studio M」というマクドナルドの研究施設。 → モチベーションアップにもなるし、拡散の素材として最適。
  3. マクドナルドだけでなく、カゴメ、キューピーの商品開発担当者も参加。専門性の高い商品が作れそうな体制に本格感がある。
  4. ハンバーガー大好きブロガー(西日本ハンバーガー協会会長)や味覚コンサルタントというエキスパート兼アドバイザーがユーザサイドにいるのでプロジェクト運営の可用性が高い。
  5. 会員証の授与による参加者への達成感と特別感の付与。

さて、6月の開発会議から1カ月を経ての「とんかつソース全国品評会」だ。

残念。

イベント感が全くない。ひっそりと知っている人だけが参加している隅っこ感が、、、、。

それを表しているのが以下の投票ボード。これは「品評会」が始まって3日目の午後の写真。クルーの人に聴いたら当日分ではなく、イベント開始時からの累積でこの投票数らしい。場所は六本木の大型店で、夏休みで平日でもお客さんもほぼ満席状態なのにこれでは寂しい。
2014-08-06 13.39.26

 

東京で5店しか実施していないイベントなのだから、実施店舗では盛り上がり感というか、お客様を巻き込んで「皆さんと同じ普通のお客様が開発したソースを食べ比べてください。」とか、「開発会議の様子を写したビデオを放映」とか、折角の「共創」を拡散するしくみがリアル店舗においては弱かったような気がする。(中国鶏肉の問題が影響したとは思えないが)

単なる「共創」ではなく、「共創マーケティング」だから、商品開発だけなくその商品を売るしくみへと繋がっていく必要がある。そのための仕掛けが弱かったのが残念。

しかし、「共創マーケティング」といえる取組は少しずつ表に出始めているように感じる。

ドコモ・インサイトマーケティング(ドコモとインテージのリサーチ子会社)で、今年に入って以下のようなテーマで「共創マーケティング」を行っている。

みんレポみらい会議 http://minrepo.com/mirai/

第1回 「未来の健康ドリンクを考える」
第2回 「未来のコスメを考える」
第3回 「ハンバーグに合う!?夢のデザートを考える」 (俺のハンバーグ山本)
第4回 「あったらいいな、こんなおやつ♪」 
第5回 「~夢のうどんメニューを考える♪~」 (はなまるうどん)

この2つの事例だけでも「共創マーケティング」の考え方と方法論を取り入れた商品開発プロジェクトがそのプロセスを拡散・共有することで共感を呼ぶだけでなく、プロジェクトで関与した方が事業者側の立場でプロモーションする展開までも視野に入れてき始めている。

そうなるとわれわれサービサーサイドにも、商品開発を支援するマーケティングリサーチ的ノウハウだけでなく、そこからはじまって最終ゴールである売上獲得につながるセールス・プロモーション的ノウハウを一体で提供することが求められてくるだろう。

まだまだ途上にある取組だと思うが、工夫次第で大きな流れになる可能性を感じる。

 

 

インフォグラフィックス

人類は洞窟壁画という最初のインフォグラフィックを生み出し、文字より早くから情報伝達手段として絵柄・図形を使っていた。つまり、インフォグラフィックスはコミュニケーションの原点ともいえる。(上はラスコー洞窟壁画:Wikiより)

一般に「インフォグラフィックス」とは何を指すのだろうと思う人もいるので、Wikiによると

「インフォグラフィックは、情報、データ、知識を視覚的に表現したものである。インフォグラフィックは情報を素早く簡単に表現したい場面で用いられ、標識、地図、報道、技術文書、教育などの形で使われている。また、計算機科学や数学、統計学においても、概念的情報を分かりやすく表現するツールとしてよく用いられる。科学的情報の可視化にも広く適用される。」

とある。

マーケティングにおけるインフォグラフィックスの事例

様々なインフォグラフィックスがある中で、もっとも日常的なインフォグラフィックスは何といっても「地図」だろう。地図は物理的に存在する地形、道路、鉄道、家屋などを平面上に表現しているものだが、さらにその上に様々な情報を掲載することで必要なメッセージを送っている。

 「世界の日本食レストラン」

「どんぶり」をモーチフにビジュアル表現したもの。最も日本食レストランが多い都市が「ソウル」ということが一目でわかる。

日本食レストラン

(出典:http://tg.tripadvisor.jp/washoku/)

 

地図に次いでなじみが深いのは「グラフ」。

下のインフォグラフィックスはインターネットで使用されている言語を2000,2005、2011の3時点で比較したもので、英語の比率が下がり、中国語の比率が高まっていることがわかる。これは単純な円グラフを3つ重ねているだけだが、デザイン処理をしているためにexcel出た作ったグラフよりはメッセージが伝わってくる。
円グラフ

(出典:http://www.techinasia.com/dominant-languages-on-internet-english-chinese/

次のインフォグラフィックスはモバイルコンテンツ市場規模をチャートに表したもの

2004年
モバイルコンテンツ1

2008年
モバイルコンテンツ2

2013年
モバイルコンテンツ3

(出典:http://visualizing.info/article/4701.html)

こうやって時系列で並べると、2004年~2013年までのモバイルコンテンツ市場がどのように変化したのかがわかりやすい。

マーケターの人は比較的数字を見慣れているから、数字だけでもデータが発信するメッセージが見えてくるが、一般の人にはなかなかそれが難しい。

インフォグラフィックスにはデータをメッセージにする力がある。

さて、次はOK Wave総合研究所様が出している調査レポートのインフォグラフィックスである。

このインフォグラフィックスを見るだけで、住宅購入前後に男性と女性が考えていることが全く違うことがよくわかる。詳細なデータは見ていないが、男性の住宅購入前の関心事は「転職」と「債務整理」、すなわち、マイホーム=住宅ローン(負債)という価値観がうかがわれ、女性は「妊娠・育児」となっており、マイホーム=子育て環境との価値観がわかる。
非常に示唆に富むインフォグラフィックスである。

OK

(出典:http://www.okwave.co.jp/ri/labo/report/201406residence/index.html)

 メラビアンの法則

さて、インフォグラフィックスが持つ視覚情報の優位性を考える時に思い浮かぶのが「メラビアンの法則」だ。メッセージを受け取る側はその意味を解釈する際に、「言語情報(言葉で説明される内容)からは7%の影響しか受けず、聴覚情報(耳から入ってくる声の質や会話の早さ、口調など)からは38%の影響を受け、視覚情報(見た目や表情、形状など)からは55%と過半数の影響を受ける」というもの。一言で言えば、コミュニケーションには視覚的要素、すなわち、ビジュアル化したものが欠かせず、その役割は非常に大きい、という意図とで使われることが多い。

 余談というか、アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが1971年に提唱したものだが、実際に行った心理学実験と上の「」内で言われていることではかなり違っている。デフォルメされている。メラビアンの行った実験については、「天使と悪魔のビジネス用語辞典」(http://www2u.biglobe.ne.jp/~hiraki/d74.htm)に詳しく記述されている。

マーケターも昔はインフォグラフィックスどころではなく、グラフ1つ描くのにもグラフ用紙に定規を使って鉛筆でグラフを描いていた。グラフの柄はスクリーントーンを1つ1つ貼っていた。(すごい時代だった!!)

今ではExcelやBIツール(弊社ではQlikView)を活用して下のようなチャートを簡単に作成することができる。(便利になった!!)

Excelで作った3次元データを使ったバブルチャート
バブルチャート

QlikViewで作ったメッコチャート(RF分析)
メッコチャート

 

 

 

 

 

 

データを見たがる人は、2つの相反する要望を持っている。

●できるだけたくさんのデータがあることの安心感

●できるだけ少ないデータで説明できる(理解できる)わかりやすさ

この2つの要望を紙面(レポートなど)で満たすのは結構むずかしい。プレゼンテーションの場があって言葉で補足できればいいのだが、それがない時は要望を満たせるか心配だ。

そんな時に、インフォグラフィックスをアプローチは非常に効果的だ。デザイナーではなくてもセンスのあるインフォグラフィックスを使いこなせるようにならないと。